鍼灸師資格はどうすれば取得できる?通信教育が可能かも解説

鍼灸師資格はどうすれば取得できる?通信教育が可能かも解説

鍼灸師は医療分野にとどまらず、介護や美容など多様な分野での活躍が見込まれる職業です。一度鍼灸師として資格を取得すれば、さまざまな就職先で仕事ができるでしょう。

ただし、鍼灸師になるにはり師・きゅう師資格を取得しなければならず、医療系国家資格のため取得にはハードルが設けられています。では、鍼灸師の資格はどうすれば取得できるのでしょうか。また、通信教育でも取得できるのでしょうか。

この記事では鍼灸師資格を取得するときのポイントや、就職先の例、鍼灸専門学校を選ぶコツを紹介します。

1.鍼灸師資格とは何か

鍼灸師資格とは、はり師・きゅう師という2つの資格の総称です。両方の資格を持っている人を鍼灸師と呼びます。

はり師ときゅう師は、下記の施術を行います。

  • はり師…鍼(はり)を身体に刺入して経穴を刺激する
  • きゅう師…艾(もぐさ)を燃焼させて経穴に熱刺激を加える

出典:公益社団法人 日本鍼灸師会「鍼灸の基礎知識」

はり師・きゅう師はどちらも医療系の国家資格であり、鍼灸の施術を行うためには必須です。また、施術の際にはお客様の悩みに向き合ったり気持ちに寄り添ったりできるコミュニケーションスキルも求められます。

鍼灸は、副作用の少ない施術として注目されています。そのため、鍼灸師は医療業界だけなく、福祉業界・美容業界・スポーツ業界などさまざまな分野で需要があります。鍼灸師は独立開業も認められており、働き方の幅を広げやすいことも特徴です。

2.鍼灸師資格取得のポイント

鍼灸師資格の取得には、条件が定められています。資格取得の条件は、次の通りです。

  • 厚生労働省と文部科学省が指定する養成学校を卒業すること
  • はり師ときゅう師の国家試験に合格すること

鍼灸師の養成学校は、「鍼灸専門学校」「鍼灸大学」「視覚障害者のための教育機関」の3種類があります。高等学校卒業後、いずれかの養成学校に3年以上通い、卒業することが必須です。

出典:e-gov「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第二条」

はり師ときゅう師の国家試験は、毎年1回実施されます。試験方法は、筆記のみで実技試験はありません。

出典:公益財団法人東洋療法研修試験財団「試験概要」

ここでは、鍼灸師資格取得のために知っておくべきポイントを2つ解説します。

2-1.通信教育では取得できない

鍼灸師資格は通信教育では取得できません。

さまざまな資格が通信教育でも取得可能です。しかし、鍼灸師は専門性の高い知識や技術が必要な医療従事職に分類されるため、医師と同じく実習を含む教育を受けなくてはなりません。

鍼灸師になるには、鍼灸専門学校や鍼灸大学などで専門知識を身に付け、臨床経験を積む必要があります。高等学校を卒業していない場合は、まずは高卒認定試験の合格を目指しましょう。

2-2.社会人は夜間学校がおすすめ

働きながら鍼灸師の資格取得を目指したい人には、夜間部コースがある鍼灸専門学校がおすすめです。カリキュラムは学校によって異なりますが、18時以降や土曜日などに授業が設定されているケースが多く見られます。

社会人学生が鍼灸師を目指す場合は、仕事と勉強の両立が1つの課題となります。昼間に授業が行われる学校の場合、仕事をしながら学校に通うことが難しい場合もあるため注意が必要です。

鍼灸師になるには、養成学校の3年間でいかに必要な知識や技術を学ぶかが重要です。仕事と勉強を両立できるように、通いやすさや振替制度の有無なども確認しておきましょう。

3.鍼灸師の就職例

鍼灸師資格を取得した人は、さまざまな分野で資格を生かして働くことができます。鍼灸師の資格があると何になれるのか、イメージしておきましょう。

鍼灸師の主な就職例は、下記の通りです。

分野 主な就職例
医療分野
  • 病院
  • クリニック
  • 診療所
  • 鍼灸院
  • 整骨院
福祉分野
  • 高齢者介護施設
  • デイサービス
美容分野
  • 美容鍼灸サロン
  • エステサロン
スポーツ分野
  • スポーツクラブ
  • クラブチーム

医療分野における鍼灸師の主な役割は、鍼灸施術の提供と検査の補助です。福祉分野では、入居者や利用者への鍼灸施術と機能訓練のサポートを行います。美容分野では、鍼灸施術の提供や美容のサポートを行うことが特徴です。スポーツ分野では、アスリートへの鍼灸施術やスポーツクラブ利用者のトレーニング補助などを担当します。

就職先によっては、リハビリやスポーツ医学の基礎知識など、鍼灸以外の知識や技術が必要となります。働きたい就職先をイメージできている場合は、求められる知識や技術もチェックしておきましょう。

また、それぞれの分野で就職する以外にも、独立して鍼灸院を開業する選択肢もあります。訪問治療専門の鍼灸師としての開業も可能です。

4.鍼灸専門学校を選ぶコツ

鍼灸師資格の取得には、養成学校での学びの時間が大きく影響します。充実した学びの時間を確保できる養成学校を選ぶことで、はり師・きゅう師の資格取得を目指しやすくなります。

鍼灸専門学校を選ぶにあたり注目すべきポイントは、下記の通りです。

  • 国家試験合格率
  • カリキュラムの内容
  • 助成金や給付制度の有無
  • 就職のサポート力

鍼灸専門学校選びでは、鍼灸師資格を取得しやすいかどうかだけでなく、合格後の就職までしっかりサポートしてくれる学校かどうかも見極めることが大切です。

ここからは、鍼灸専門学校を選ぶコツを具体的に解説します。

4-1.国家試験合格率が高い

鍼灸専門学校に通う理由は、国家試験に合格するためです。国家試験にスムーズに合格できるように、合格率が高い学校を選びましょう。

2022年4月に実施された「第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験」のはり師・きゅう師の合格率は、下記の通りです。

はり師 74.2%
きゅう師 76.1%

出典:厚生労働省「第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」

公表している合格率がこれまでの試験合格率を上回っている学校は、合格しやすい傾向にあると言えます。さらに、国家試験対策用テキストを配布したり模試を開催したりしている学校であれば、生徒へのサポートが手厚いため安心です。

4-2.カリキュラムが充実している

学校選びでは、カリキュラムが充実しているかどうかもチェックしましょう。鍼灸専門学校では、鍼灸師の国家試験科目である14科目を履修します。

他にも、はり師・きゅう師の国家試験に合格するには、座学だけでなく実技や臨床実習から学ぶ内容もしっかり理解する必要があります。

「参加型臨床実習を実施」「実技は教員2名体制で担当」「実力派講師が多数在籍」など、指導面の特徴にも注目しましょう。また、授業外でも実技室を開放している学校であれば、空き時間を使って実技練習に励むことができます。

4-3.充実した助成金や給付制度がある

助成金や給付制度がある学校を選ぶことで、資格取得に伴う金銭面の負担の軽減が可能です。

鍼灸専門学校に通うとなると、入学金や授業料などの学費が450万円前後かかります。さらに、白衣や教科書、通学のための交通費なども必要となるため、利用できる制度を確認しておきましょう。

助成金や給付制度の具体例は、下記の通りです。

  • 学費減免制度
  • 奨学金制度
  • 教育訓練支援給付金

また、国に認定されている講座を受ける場合は、「専門実施教育訓練給付金制度」も利用できます。ただし、働く人のキャリア形成が目的の制度であるため、対象者は社会人学生のみです。

出典:厚生労働省「専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問」

4-4.就職サポートが充実している

はり師・きゅう師の資格取得は、鍼灸師として活躍するための通過点です。希望通りの就職ができるように、就職のサポート力にも注目しましょう。

「進路指導に力を入れている」「独立開業を目指すサポートを行っている」など、就職サポートの内容は学校によってさまざまです。

学校によって差はあるものの、鍼灸専門学校の就職率は全体的に高い傾向にあります。各学校では、卒業生の就職実績を公開しているため、就職率や就職先なども参考に、就職に有利な学校を選びましょう。

まとめ

鍼灸師資格とは、はり師・きゅう師という2つの医療系国家資格の総称です。厚生労働省と文部科学省が指定する養成学校を卒業し、はり師ときゅう師の国家試験に合格することで鍼灸師になれます。専門的な知識を必要とする医療従事職のため、鍼灸師資格を通信教育で取得することはできません。

鍼灸師は医療業界だけなく、福祉業界・美容業界・スポーツ業界など、さまざまな分野で資格を生かして働くことができます。

ただし、鍼灸師になれるかどうかは養成学校での学びにかかっています。「国家試験合格率」「カリキュラムの内容」「助成金や給付制度」「就職サポート」といったポイントに注目し、鍼灸師の資格試験に有利な学校を選びましょう。

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