鍼灸師はアメリカでは高年収を得られる?鍼灸師になる方法も解説
日本の平均賃金は、アメリカやドイツなどの諸外国に比べて安いと言われており、より豊かな生活を送るためにも海外移住を選択する方が少なくありません。実際に、自国での年収の低さが理由で日本からアメリカに移住し、アメリカの鍼灸院や美容鍼灸業界で活躍する日本人鍼灸師は多くいます。
では、日本とアメリカにおける鍼灸師の年収は具体的にどのような違いがあるのでしょうか。そこで今回は、アメリカで活躍する鍼灸師の年収から、アメリカで鍼灸師として働くメリット・デメリット、さらにアメリカで鍼灸師が稼ぐためのポイントまで徹底解説します。
1.アメリカの鍼灸師の年収はいくら?
アメリカは、日本よりも人々の賃金水準が高いことでも知られています。では、実際にアメリカで働く鍼灸師の年収はどれくらいあるのでしょうか。
ここでは、アメリカの単純な平均年収と、ビッグマック指数(2023年3月時点で-41.2%)を利用した実質年収、いわゆる「物価差を考慮した年収」について紹介します。
【アメリカの鍼灸師の平均年収(1米ドル=130円とし、4桁目を四捨五入して算出)】
割合 | 平均年収 | 物価差を考慮した年収 |
---|---|---|
全体 | 約933万円 | 約549万円 |
下位10% | 約385万円 | 約226万円 |
下位25% | 約494万円 | 約290万円 |
中央値 | 約787万円 | 約463万円 |
上位25% | 約1,280万円 | 約752万円 |
上位10% | 約1,644万円 | 約966万円 |
出典:米国労働統計局(U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS)「Acupuncturists」
出典:The Economist「Our Big Mac index shows how burger prices are changing」
一方で、日本で働く鍼灸師の平均年収は下記の通りです。なお、日本では鍼灸師に限定された年収の公的な統計情報がありません。したがって、厚生労働省が公表した賃金構造基本統計調査データより、鍼灸師を含む「その他の保健医療従事者」の統計を利用して算出しています。
【日本の鍼灸師の平均年収】
平均年収 | 約473万円 |
---|
アメリカの鍼灸師の平均年収は全体で約933万円、そして物価差を考慮した場合の平均年収は約549万円です。単純な平均年収をアメリカと日本で比較した場合、アメリカは日本よりも約450万円高いという点を見ると、アメリカでの活躍を検討し始める日本の鍼灸師が多いことも頷けるでしょう。
また、アメリカで仕事をする鍼灸師のうち上位25%以上は年収1,000万円を超えており、物価差を考慮してもかなりの高収入が期待できます。上位10%となると平均年収は1,600万円、物価高を考慮した年収でも1,000万円近くの収入を得られます。鍼灸治療の勤務経験が長いベテラン鍼灸師や、院長または院長候補の鍼灸師がこの層にあたると言えるでしょう。
その一方で、下位25%の鍼灸師の年収は約494万円、物価差を考慮した年収は約290万円相当と、さほど稼げない可能性も十分にあることを覚えておきましょう。
2.アメリカで鍼灸師として活動する場合のメリットとデメリット
アメリカで高収入を得ながら働くことに魅力を感じて、日本の鍼灸師業務で学んだ鍼灸技術・施術スキルを生かしながら海外で活躍している鍼灸師の方は多く存在します。
しかし、アメリカで鍼灸師業務全般に携わるには、メリットとデメリットの両方があることに注意が必要です。「アメリカで働いてみたものの、自分にはやっぱり日本が向いていた」と帰国を選んだ場合、また1から転職活動を始めなければならず、後悔する可能性もあります。
後悔のない選択をするためにも、アメリカで鍼灸師として活動する場合のメリット・デメリットを確認しておきましょう。
2-1.メリット
アメリカで鍼灸師として働くことには、下記2点のメリットがあります。
- 高収入を狙える
- 鍼灸師の需要が大きい
前述の通り、アメリカで働く鍼灸師の年収は、日本と比較して高いことが特徴です。アメリカで働くすべての鍼灸師の年収が高いというわけではないものの、努力をした分高収入を狙いやすいと言えるでしょう。
また、アメリカにおける鍼灸市場の年平均成長率は16.3%で、2032年中には1,436億米ドルに市場が拡大すると言われています。市場が成長・拡大するほど、鍼灸師の収入にもよい影響を与えるでしょう。
出典:Persistence Market Research「Acupuncture Treatment Market」
2-2.デメリット
アメリカで鍼灸師として働くデメリットには、下記の2点が挙げられます。
- 言語の壁がある
- 保険制度が日本ほど充実していない
日本人が鍼灸師としてアメリカで活躍するためには、まず言語の壁を越える必要があります。日常的な英会話能力のみならず、コミュニケーションから相手の心身状態を把握できるような高い英語力も欠かせません。
また、アメリカは日本と比較して医療保険制度が充実していない点でも知られています。骨折による手術と1日の入院でも日本円で150万円を超えることも多々あり、アメリカでの医療が必要となった際に初めて日本における医療保険制度の仕組みのありがたさを実感する方も多くいるでしょう。
3.アメリカで鍼灸師になる方法
「日本で鍼灸師として活動していたら、渡米してもすぐ鍼灸師として働ける」と考える方もいます。しかし、アメリカで鍼灸師として働く場合、日本国内の鍼灸師資格をそのまま活用することはできません。
アメリカでは、州ごとに鍼灸師資格の要件が定められています。うち、カリフォルニア・オクラホマ・サウスダコタ・アラバマ以外の州で利用できる資格として、鍼東洋医学認定委員会(NCCAOM)による鍼灸師資格があります。アメリカのどの州で働きたいかがまだ決まっていない方は、NCCAOM資格の取得をまず目指すとよいでしょう。
NCCAOM資格を取得し、アメリカで鍼灸師として働く方法を詳しく解説します。
3-1.アメリカでの就労ビザの獲得
アメリカで鍼灸師として働く決意が固まった際は、まずアメリカでの就労ビザを獲得しましょう。就労ビザは、アメリカで働く際に必須となる滞在資格であり、取得せずにアメリカで働くと不法就労になってしまいます。
また、アメリカの就労ビザにはさまざまな種類があり、種類によって学歴や職業などの条件も異なります。いずれの就労ビザにおいても、申請の流れは基本的に同様です。
- 申請に必要な書類(パスポート・申請書など)を揃える
- 手数料を支払う
- アメリカ大使館・領事館へ郵送する
- 面接
- ビザ発給
申請する就労ビザによって必要書類や手数料、さらに発給までの期間が異なります。2~3か月以上の期間を要するケースもあるため、余裕をもって申請を済ませることがおすすめです。
3-2.鍼灸の養成施設卒業を証明
就労ビザの獲得後は、NCCAOMの審査に申し込みます。日本で養成施設を卒業し、はり師・きゅう師資格を取得している場合、在学中の成績証明書とはり師・きゅう師資格証明をNCCAOMへと提出し、NCCAOMが承認した第三者審査機関による審査を受ける必要があります。
審査が完了するまでには、通常6か月ほどの期間を要します。この審査を通過しなければNCCAOMの試験を受験することができないため、必ず前もって進めておきましょう。
3-3.実技講習の修了と試験の合格
NCCAOMの審査が終了した後は、アメリカでの鍼治療の実技講習・試験である「Clean Needle Technique Certificate」を受講する必要があります。Clean Needle Technique Certificateは完全オンライン形式で行われるものであり、英語コースのほか中国語または韓国語のコースも受けられます。
Clean Needle Technique Certificateのコースを修了後、NCCAOMの本試験を受験し、合格すれば晴れてアメリカで働ける鍼灸師として認定されます。
なお、NCCAOMの試験内容は、鍼灸師の場合「東洋医学の基礎(FOM)」「経絡と鍼治療(ACPL)」「生物医学(BIO)」の3種類から出題されます。
4.アメリカで鍼灸師が稼ぐためのポイントとは
アメリカで鍼灸師が稼ぐためのポイントは、「事前に働く場所や働き方を計画しておく」「競合相手に勝てる技術を磨く」の2点です。
アメリカは州によって法律が異なり、鍼灸師資格の取得方法や条件も変わってきます。活動したい州を決めずに渡米すると、鍼灸師として働けない可能性も出てくるため、事前に働く場所や働き方などの綿密な計画を立ててから渡米することが大切です。
また、アメリカは鍼灸市場の年平均成長率が高く、鍼治療の需要の高さからアメリカ国内の鍼灸師も右肩上がりに増加しており、日本よりも競合相手が多いことも特徴です。
競合相手に勝つためには、それだけ鍼灸技術や独自性が必要となります。ほかにはないコンセプトを生み出したり、日本人ならではの丁寧な治療技術を磨き上げたりして、競合との差別化を図りましょう。
まとめ
アメリカの鍼灸師の平均年収は全体で約933万円、「ビッグマック指数」と呼ばれる物価差を考慮した場合の平均年収は約549万円です。一方で、日本で働く鍼灸師の平均年収は約473万円と、大きな違いがあります。
アメリカで鍼灸師として働くことには主に給料面でのメリットがあるものの、言語の壁・医療保険制度の充実していなさなどのデメリットもあります。加えて、就労ビザやアメリカで活躍するための鍼灸資格の取得などの努力も必要です。
また、アメリカは鍼灸院・鍼灸師の数が多く、競合相手に勝つための継続した努力も欠かせません。より高みを目指したいと考えるなら、アメリカで鍼灸師として働くことも候補に入れてみてはいかがでしょうか。
関連記事Related Articles
知っておきたい鍼灸師の年収!開業で高収入を狙えるのは本当?
「鍼灸師の資格を取る前に、平均年収や、開業で成功すれば高収入を狙えるのか知りたい」という人は多いのではないでしょうか。一般的に、鍼灸師の平均...
鍼灸師について夜間がある鍼灸師の専門学校おすすめ7選!特徴や進路・選び方を解説
鍼灸師を目指す方の中には、すでに社会人として働いている方も少なくありません。そういった方が働きながら鍼灸師の資格を取得するためには、夜間部が...
鍼灸師について女性鍼灸師の魅力|ニーズと活躍分野・女性鍼灸師になるメリットも
近年、鍼灸師を目指す女性は増えており、鍼灸師を目指す専門学校では男性よりも女性のほうが生徒の割合が高い学校もあります。鍼灸師と言えば男性、と...
鍼灸師について鍼灸師国家試験の合格率・難易度とは|試験内容や勉強方法も解説
鍼灸師になるためには、国家試験に合格する必要があります。しかし、「鍼灸師国家試験」というものはなく、厳密には「はり師国家試験」「きゅう師国家...
鍼灸師について鍼灸師になりたい!おすすめの勉強法は?
鍼灸師になるためには専門の学校を卒業し、かつ国家試験に合格しなければなりません。しかし、「鍼灸師」という資格があるわけではなく、具体的な試験...
鍼灸師について主婦が鍼灸師になるには?家事や育児の合間に資格は取れる?
鍼灸師とは、鍼(はり)と灸(きゅう)を用いた施術を行う専門職のこと。「はり師」と「きゅう師」の両方の国家資格を取得した方のみが、鍼灸師として...
豆知識