最短で鍼灸師資格を得る方法とは|必要な学費や学校の選び方も解説
鍼灸師は、鍼(はり)と灸(きゅう)を用いた施術を行う専門職です。人体の不調の緩和・改善に努める医療技術職であり、鍼灸師として働くためには「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格を取得する必要があります。
「はり師」と「きゅう師」の国家試験はいずれも受験資格が定められており、特定のカリキュラムを修了しなければ受験できません。そのため、鍼灸師資格を取得するまでの道のりは長いというイメージが定着していることも実情です。
では、鍼灸師資格を最短で取得する場合、必要な年数はどれくらいになるのでしょうか。今回は、鍼灸師資格を最短で得るステップを高校生・大学生・社会人別に紹介します。また、資格取得にかかる費用や学校選びのポイントも説明しているため、鍼灸師資格を取得したいという方はぜひ参考にしてください。
1. 最短で鍼灸師になるのに必要な年数は?
鍼灸師資格の取得には、最低でも3年の期間が必要です。
鍼灸師は、鍼(はり)と灸(きゅう)を扱う専門職であり、はり師国家試験ときゅう師国家試験の2つの試験に合格しなければなりません。はり師・きゅう師国家試験を受験するためには、高校を卒業したうえで最低3年間以上「文部科学大臣の認定した学校、厚生労働大臣の認定した養成施設または都道府県知事の認定した養成施設」で勉強し、必要なカリキュラムを修める必要があります。
ここからは、鍼灸師を最短で目指すためのステップを、高校生・大学生/専門学校生・社会人ごとにそれぞれ詳しく説明します。
1-1. 高校生が最短で鍼灸師になるためのステップ
現段階で高校に通学している方が最短で鍼灸師を目指す際のステップは、下記の通りです。
1 | 高校を卒業する |
---|---|
鍼灸師を目指すための学校(専門学校・大学・養成施設など)に入学するためには、高校を卒業している必要があります。なお、全日制・定時制・通信制はもちろん、高卒認定も該当します。卒業間近になったら、進学する鍼灸師専門学校を選択しておきましょう。 |
2 | 鍼灸師専門学校に入学する |
---|---|
高校卒業後は、鍼灸師専門学校に入学します。鍼灸を学べる学校には専門学校以外にも4年制大学などがありますが、専門学校であれば3年で国家試験を受けられます。4年制大学は最短ルートではないものの、将来の選択肢にも役立つ幅広い知識や専門技能を身につけられるでしょう。 |
3 | 鍼灸師専門学校を卒業・鍼灸師国家試験に合格する |
---|---|
鍼灸師専門学校で鍼灸について学び、必要なカリキュラムを修了したあとは、はり師・きゅう師国家試験を受験します。2つの資格試験を受けることとなりますが、共通問題が多いため単純に異なる2つの国家試験を同時に受けるよりも負担は少ないでしょう。 |
高校卒業後から鍼灸師専門学校に通うことで、比較的若い年齢から鍼灸師として活躍できます。なお、鍼灸師専門学校への入学に年齢は関係ありません。高校を卒業していれば、何歳からでも入学することが可能です。
1-2. 大学生・専門学校生が最短で鍼灸師になるためのステップ
現段階で一般的な大学・専門学校に通学している方が最短で鍼灸師を目指す際のステップは、下記の通りです。
1 | 大学・専門学校を卒業する |
---|---|
高校を卒業していれば鍼灸師専門学校に通うことはできるものの、すでに別の大学や短大、専門学校に通っているという場合は、その学校をまず卒業することが最優先です。 |
2 | 鍼灸師専門学校に入学する |
---|---|
大学・専門学校を卒業したあとは、最短の3年間で卒業できる鍼灸師専門学校に入学します。新たに3年間学校へ通いながら、鍼灸に関する知識や技術をしっかりと学びましょう。 |
3 | 鍼灸師専門学校を卒業・鍼灸師国家試験に合格する |
---|---|
鍼灸師専門学校で必要なカリキュラムを修了したあとは、はり師・きゅう師国家試験を受験します。いずれの試験にも合格すれば、鍼灸師資格を取得できます。 |
すでに別の大学・専門学校に通っている場合、夜間の鍼灸師専門学校に通えば両立できる可能性はあります。しかし、その分学費が二重で発生するだけでなく、すべての通学スケジュールがうまく合う可能性は決して高くありません。
負担がかかって通い続けられなくなるという事態に陥らないためにも、すでに通っている学校を卒業したのち鍼灸師専門学校に通い直すという方法が最も無難と言えるでしょう。
1-3. 社会人が最短で鍼灸師になるためのステップ
現段階ですでに社会人として働き始めている方が最短で鍼灸師を目指す際のステップは、下記の通りです。
1 | 現在の仕事を継続するか退職するかを決める |
---|---|
鍼灸師資格の取得を目指すにあたって、まずは現在の仕事を継続するか退職するかを決めます。鍼灸師専門学校は働きながら通うことも可能ですが、後述する鍼灸師の専門学校選びに注意が必要です。 |
2 | 鍼灸師専門学校に入学する |
---|---|
入学準備が整ったあとは、通いたい鍼灸師専門学校を選んで入学します。働きながら通う場合は夜間部の鍼灸師専門学校など、仕事と両立できるカリキュラムが取り入れられている学校を選びましょう。 |
3 | 鍼灸師専門学校を卒業・鍼灸師国家試験に合格する |
---|---|
鍼灸師専門学校で必要なカリキュラムを修了したあとは、はり師・きゅう師国家試験を受験します。いずれの試験にも合格すれば、鍼灸師資格を取得できます。 |
なお、はり師・きゅう師国家試験はいずれも年に1回の実施となります。いずれか一方でも不合格となった場合は鍼灸師として働けず、翌年に再試験を受けなければなりません。鍼灸師資格の最短取得を目指すためにも、試験前はしっかりと勉強しておきましょう。
1-4. 【注意】通信教育では鍼灸師になれない
通信教育で鍼灸師資格を取得したいと考える方もいますが、鍼灸師資格は通信教育で取得することができません。鍼灸師は鍼や灸を用いて施術を行う専門職であり、実務技術をしっかりと身につける必要があるためです。
前述の通り、夜間部であれば仕事や家業と両立しながら通学できるため、なるべく普段の生活を大きく変化させたくないという方は夜間部を選ぶとよいでしょう。
2. 鍼灸師資格取得にかかる費用
鍼灸師資格取得にかかる費用においては、必要な科目を修了するための学費が大きな割合を占めています。下記は、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧学校の平均学費です。
昼間コース | |
---|---|
入学金 | 35万1,000円 |
授業料 | 117万4,000円 |
実習費 | 4万4,000円 |
設備費 | 14万5,000円 |
その他 | 2万円 |
夜間コース | |
---|---|
入学金 | 42万1,000円 |
授業料 | 113万5,000円 |
実習費 | 3万円 |
設備費 | 19万2,000円 |
その他 | 3万円 |
出典:東京都専修学校各種学校協会「専修学校各種学校統計資料」
このように、鍼灸師資格の取得費用は昼間コース・夜間コースとでやや違いがあることも覚えておきましょう。
2-1. 鍼灸師資格取得に使える補助制度
鍼灸師資格の取得費用は、決して安くはありません。費用負担をなるべく抑えたいという場合は、鍼灸師資格取得に使える補助制度「教育訓練給付制度」の活用がおすすめです。
教育訓練給付制度とは、労働者の能力開発やキャリア形成を支援し、雇用安定・就職促進を目的に教育訓練受講費用の一部が支給されるという制度です。当制度を活用すれば、鍼灸師を目指すための学校にかかる費用の一部がカリキュラム修了後に支給されます。
教育訓練給付の対象となる学校は限られているため、あらかじめ調べておくとよいでしょう。
3. 最短で資格を取得するための学校選びのポイント
鍼灸師資格を最短で取得するためには、学校選びにおいて下記3つのポイントをチェックしておきましょう。
●国家試験合格率の高さ
試験合格率の高い鍼灸師学校は、それだけカリキュラム内容がしっかりしており、フォロー体制も整っていると言えます。
●通学時間の短さ
通学時間がかかる学校は負担が重く、通い続けることが億劫となる可能性もあります。なるべく負担なく通えるよう、自宅から近い・行きやすい学校を選ぶとよいでしょう。
●就職サポートの有無
学校によっては、資格取得後の就職サポートが実施されているため、スムーズな就職が期待できます。面接対策なども支援してもらえるため、人によっては非常に大きなメリットとなるでしょう。
4. 資格取得後に鍼灸師が活躍できる場所
資格取得後に鍼灸師が活躍できる代表的な職場には、「鍼灸院・整骨院」「介護施設」「病院・クリニック」の3つが挙げられます。
鍼灸院・整骨院 |
---|
鍼灸院や鍼灸整骨院は、鍼灸師の代表的な就職先です。身体に何らかの不調を抱えたお客様に対し、鍼灸施術を行います。鍼灸整骨院の場合、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師と連携して施術することもあります。 |
介護施設 |
---|
介護施設で働く鍼灸師は、鍼灸院に通えない要介護者の方・高齢者の方に鍼灸施術を行います。施設のなかで施術するケースもあれば、訪問鍼灸師として訪問鍼灸業務を行うケースもあります。 |
病院・クリニック |
---|
病院・クリニック内の整形外科やリハビリテーション科などに勤務し、医師や看護師、その他医療従事者と連携して鍼灸施術を行います。チーム医療が主流となるため、鍼灸以外の知識や技術も身につきます。 |
それぞれ働き方が違えば向き・不向きも人によって異なるため、まずは代表的な鍼灸院からチャレンジしてみるのもよいでしょう。鍼灸院によってはスポーツ鍼灸・美容鍼灸など特定分野を設けているところもあり、仕事内容や必要な専門知識も異なるため、鍼灸師求人の事前リサーチが非常に大切です。
まとめ
鍼灸師資格の取得には、最低でも3年の期間が必要です。はり師・きゅう師国家試験の受験資格を満たすために必要となる学校・養成施設のなかで、最も短い期間で卒業できるのは「鍼灸師専門学校」となります。通学・就業状況にかかわらず、最短取得を目指すなら鍼灸を学べる専門学校へ入学するとよいでしょう。
また、はり師資格・きゅう師資格は通信教育で取得することができません。学校選びの際は、負担なく通える環境を整えたのち、試験合格率の高さや通学時間の短さ、さらに就職サポートの有無といった情報をチェックしておくとよいでしょう。ここまでの内容を参考に、ぜひ最短での鍼灸師資格取得を目指してみてください。
関連記事Related Articles
鍼灸師資格はどうすれば取得できる?通信教育が可能かも解説
鍼灸師は医療分野にとどまらず、介護や美容など多様な分野での活躍が見込まれる職業です。一度鍼灸師として資格を取得すれば、さまざまな就職先で仕事...
鍼灸師について鍼灸師になりたい!おすすめの勉強法は?
鍼灸師になるためには専門の学校を卒業し、かつ国家試験に合格しなければなりません。しかし、「鍼灸師」という資格があるわけではなく、具体的な試験...
鍼灸師について鍼灸師を目指している人必見!鍼灸師の資格取得方法
目に見えない痛みや苦しい症状を癒す鍼灸師は、年々人気の高まっている職業です。しかし、鍼灸師になりたくても、資格を取って仕事ができるまでの具体...
鍼灸師について女性鍼灸師の魅力|ニーズと活躍分野・女性鍼灸師になるメリットも
近年、鍼灸師を目指す女性は増えており、鍼灸師を目指す専門学校では男性よりも女性のほうが生徒の割合が高い学校もあります。鍼灸師と言えば男性、と...
鍼灸師について鍼灸師はフリーランスで働ける?必要な手続きや仕事探しの方法を解説
特定の企業や団体に所属せず、法人として独立しておらず、店舗を持たずに個人事業種として働く方をフリーランスと呼びます。鍼灸師は独立開業権を持っ...
鍼灸師についてスポーツ鍼灸の効果は?施術内容やスポーツ鍼灸師になる方法を解説
スポーツ鍼灸は、主にスポーツ選手のパフォーマンスを向上させるために行う鍼灸施術を指します。近年ではスポーツ人口も増加しており、スポーツ鍼灸師...
鍼灸師について幅広い分野でニーズあり!女性鍼灸師の将来性
鍼灸師の道に将来性を見出して、養成学校に通い始める女性が増えています。鍼灸治療は鍼(はり)と灸(きゅう)を用いて体の痛みなどをやわらげるもの...
鍼灸師について