マッサージ資格は2種類ある?国家資格と民間資格の違いを解説

マッサージ資格は2種類ある?国家資格と民間資格の違いを解説

マッサージに関連する資格には、大きく分けて「国家資格」と「民間資格」の2種類があります。しかし、それぞれの資格において「どのような違いがあるのか」「どういった場所で働けるのか」などを詳しく把握している人は少ないのではないでしょうか。

当記事では、マッサージにまつわる国家資格と民間資格のそれぞれ違いや、資格の種類などを解説します。また、国家資格を取得するメリットなども併せて紹介するため、「マッサージの資格はどれを取得すればよいのか」といった判断基準が欲しい人は、ぜひ参考にしてください。

1.マッサージの国家資格と民間資格

マッサージにまつわる資格は、国家資格や民間資格など複数存在します。

国家資格
  • あん摩マッサージ指圧師
  • 柔道整復師 など
民間資格
  • 整体師
  • リフレクソロジスト など

一見同じように思われがちですが、国家資格と民間資格では実施できる施術に大きな違いがあります。それぞれどういった違いがあるのか、詳しく解説します。

1-1.保険適用できる指圧・マッサージには国家資格が必要

保険適用内の指圧やマッサージを行うには、施術者が国家資格を持っている必要があります。

指圧やマッサージ、あん摩を行う際に必要となる国家資格は「あん摩マッサージ指圧師」です。もし、あん摩マッサージ指圧師の資格を保有しない状態で、「指圧やマッサージができる」と名乗って施術を行った場合は、違法とみなされます。

出典:厚生労働省「医業類似行為に対する取扱いについて」

1-2.民間資格で行えるのは「もみほぐし」

「指圧」「マッサージ」「あん摩」は、国家資格がないとできないのに対し、「もみほぐし」「リラクゼーション」「エステ」「整体」などは、民間資格でも施術が可能です。

民間資格は、下記のようなものがあります。

  • リンパドレナージュセラピスト
  • カイロプラクティック
  • アロマセラピスト
  • リフレクソロジスト

民間資格では、疲労回復などのリラクゼーション目的の施術ができます。具体的には下記の内容です。

  • 凝り改善目的のもみほぐし行為
  • リラックス目的の施術
  • 痩身や美容目的の施術

民間資格はあくまで、身体の凝りや疲れを解消したり、美容整体を行ったりすることなどが可能であって、医療類似行為に当たる施術は違法となります。国家資格でないとできない施術との違いを、十分理解しておきましょう。

2.マッサージ・もみほぐしのできる資格の種類

マッサージやもみほぐしができる資格には、多種多様なものがあります。ここからは、国家資格・民間資格でそれぞれどのような資格があるのか、またどのような施術が可能なのかなどについて詳しく解説します。

2-1.国家資格

マッサージなどの施術ができる国家資格に当たるものは、下記の3種類です。

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師は、肩こりや腰痛などの症状を訴える人に対し、手や指でもんだり押したりするといったマッサージが行える資格です。マッサージにより血行を促進して、体の不調を和らげます。

あん摩マッサージ指圧師の活躍場所として挙げられるのが、治療院や高齢者施設、スポーツの現場、在宅訪問などです。高齢者施設では健康管理などの目的で、スポーツの現場では運動後の疲労除去などを目的として施術を行います。

また、従業員の労災予防や作業能率の向上を目的とした、企業内の「ヘルスキーパー」としても活躍できます。

出典:厚生労働省職業情報提供サイト「あん摩マッサージ指圧師」

柔道整復師

柔道整復師は「非観血的療法」と呼ばれる、出血を伴わない、皮膚の上から行う施術で、ケガを治療できる資格です。外傷性が明らかな打撲や捻挫、骨折などの施術に加えて、運動療法や運動指導、リハビリテーションの指導なども行い、回復に導きます。

柔道整復師の活躍場所としては、病院・整骨院・接骨院から、介護・福祉施設などまでさまざまな場所が挙げられます。

出典:厚生労働省職業情報提供サイト「柔道整復師」

鍼灸師(しんきゅうし)

鍼灸師は、「鍼(はり)」や「灸(きゅう)」を使った施術ができる資格です。鍼・灸を使い、身体のツボや皮膚に刺激を与えて自己治癒力を高め、不調の改善や病気の予防・治療などを行います。

厳密には、「はり師」と「きゅう師」は別の資格となりますが、両方とも取得して施術をできるようにしている人が多いため、合わせて鍼灸師と呼ばれています。鍼灸師は鍼灸院だけでなく、医療現場や介護・福祉施設、美容目的の鍼灸院やリラクゼーションサロンなどで活躍できます。

出典:厚生労働省職業情報提供サイト「はり師、きゅう師」

2-2.民間資格

リラクゼーション目的の施術などが行える民間資格に当たるものとして、下記の3種類を紹介します。

整体セラピスト
日本セラピスト認定協会の検定試験に合格することで取得できる資格で、手指や機器を用いて骨格や関節の歪みを整える「整体」を行うことが可能です。

出典:NPO法人 日本セラピスト認定協会「整体セラピスト検定」

カイロプラクター
カイロプラクターは、カイロプラクティック(脊椎徒手療法)を行う資格です。カイロプラクティックとは、西洋医学を基礎とした手技療法で、体全体のバランスを整えることを目的としています。

出典:一般社団法人日本カイロプラクターズ協会「カイロプラクティックとは」

リフレクソロジスト
リフレクソロジストは、足裏などの刺激を主としたリフレクソロジーを行う資格です。リフレクソロジーでは、手・足・顔などを指で優しく刺激し、肩こりなどの不調を和らげます。

出典:厚生労働省職業情報提供サイト「リフレクソロジスト」

整体院やリラクゼーションサロンで働きたい場合は、上記の民間資格を取得することで、雇用主やお客様からの信頼性向上にもつながるでしょう。

3.マッサージの国家資格を取得するメリット

国家資格を取得するには、最短でも3年は学校に通う必要があるため、仕事・生活との兼ね合いや金銭的な面で難しいと考える人もいるでしょう。しかし、学校に通って専門知識や技術を身に着けた上で、国家資格を取得すれば、働く際に多くの恩恵を得られます。

ここからは、国家資格を取得するとどのようなメリットを得られるかについて紹介します。

3-1.医療機関をはじめとした幅広い職場で働ける

国家資格を取得していれば、医療機関をはじめ、治療院や鍼灸院などのさまざまな場所で働くことができます。治療院で行うマッサージや鍼・灸を使った施術などは、あん摩マッサージ指圧師や、はり師・きゅう師の国家資格がなくては行えません。施術に必要とされる資格があるかどうかで、勤務先の幅が大きく広がります。

また、国家資格を取得するには、専門知識が学べる学校で最低でも3年は学び、試験に合格する必要があります。在学中には、医学の基本的理論や病気の知識なども学べるため、資格の取得は専門知識を身に着けている証明にもなります。民間資格のみで勤まる職場であっても、国家資格を持っている人がいれば、お客様からの信頼度もより高まるでしょう。

3-2.機能訓練指導員やアスレチックトレーナーになれる

国家資格を持つことで、機能訓練指導員やアスレチックトレーナーとしても活躍することができます。

機能訓練指導員

機能訓練指導員は、介護保険法で定められている名称です。通所介護(デイサービス)の施設などで利用者に対し、日常生活に必要な身体機能を維持するための機能訓練などを行います。機能訓練指導員として働くには下記の資格のいずれかを持っていることが条件になります。

  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 看護師
  • あん摩マッサージ指圧師
  • 柔道整復師
  • 鍼灸師

機能訓練指導員は資格ではありませんが、高齢化社会において地域包括ケアシステム構築に寄与していくためにも、今後ますます必要とされるでしょう。

出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

アスレチックトレーナー

アスレチックトレーナーは、スポーツ競技者の健康管理などを行う民間資格です。アスレチックトレーナーと混同されやすい「スポーツトレーナー」は、仕事の総称であり、資格ではないという点が異なります。

「あん摩マッサージ指圧師」や「鍼灸師」と合わせて資格を持つことで、よりクオリティの高いケア・サポートを行うことができるでしょう。

出典:特定非営利活動法人ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会「JATAC-ATCについて」

3-3.施術所を独立開業できる

あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師・鍼灸師は、いずれも独立して自分の施術所を開業しやすい資格です。自宅やテナントに店舗を構えるだけでなく、訪問マッサージといった選択肢も選ぶことができ、働き方の自由度が広がります。

特にあん摩マッサージ指圧師に関しては、資格保有者の半数以上が自営業やフリーランスであるとのデータがあるほど、独立することがメジャーな働き方です。国家資格があれば、正社員に縛られず、さまざまな働き方を選択できるといったメリットがあります。

出典:厚生労働省職業情報提供サイト「あん摩マッサージ指圧師」

4.マッサージの国家資格は通信教育で取得できる?

マッサージの国家資格である「あん摩マッサージ指圧師」は、通信講座やeラーニングのみでの資格取得が認められていません。あん摩マッサージ指圧師は、医療類似行為を行える国家資格であり、指圧やマッサージをしようとする以上、責任が伴います。専門知識を身に着けるだけでなく、実技指導を通して技術を直接学ぶ必要があり、専門学校など指定のアカデミーに通わなければ取得できません。

仕事などで日中コースの学校へ通えない場合は、社会人向けの夜間スクールなどもあります。ご自身で通いやすい学校をぜひ見つけてみてください。

まとめ

マッサージにまつわる資格の種類は、多岐にわたります。国家資格と民間資格では実施できる施術に違いがあり、保険適用内の施術や医療類似行為に当たる施術の場合は、国家資格が必要になります。一方で、もみほぐしやリラクゼーション・痩身・美容を目的とした施術においては、民間資格でも行うことが可能です。

マッサージなどの施術ができる国家資格に当たるものには、「あん摩マッサージ指圧師」「柔道整復師」「はり師・きゅう師」があります。国家資格を取得するメリットとして、働く場所の選択肢が増えたり、機能訓練指導員やアスレチックトレーナーとしても活躍したりすることができます。働ける場所・職業や働き方の選択肢を増やしたい方は、ぜひ国家資格の取得を目指してみてください。

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