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訪問鍼灸の開業に必要な手続きとは?経営を成功させるポイントも

訪問鍼灸の開業に必要な手続きとは?経営を成功させるポイントも

訪問鍼灸は、高齢者や身体の不自由な方々のニーズに応えるサービスとして注目されています。自宅や施設など、患者の生活環境に合わせた治療を提供できる点が特徴です。開業することで自分のペースで働けるだけでなく、地域社会に貢献する機会も広がります。そのため、鍼灸師として新たなステップを踏み出したいと考える方にとって魅力的な選択肢です。

この記事では、訪問鍼灸の開業に必要な手続きについて詳しく説明します。保健所や地方厚生局、税務署への届け出方法を具体的に解説し、開業後の経営を成功させるためのポイントについても触れるので、ぜひご覧ください。

1.訪問鍼灸とは?

訪問鍼灸とは、国家資格を持つ鍼灸師が鍼灸院以外の場所で、お客様の体の痛みを緩和するために施術するサービスです。訪問マッサージと同様にお客様の自宅や施設に訪問し、身体の痛みを緩和するために施術します。

訪問鍼灸のメリットは、お客様がリラックスしている状態で施術を受けられることです。自宅や施設以外の場所では落ち着かないという人に喜ばれます。

また、高齢者や障がいを持つお客様、慢性的な疾患を抱えるお客様、産後の症状緩和を望むお客様にとって、資格を持つ鍼灸師による訪問鍼灸は欠かせないサービスです。1人で外出できない、公共交通機関に乗ることができない、といった方が移動しなくても保険適用内のケアが受けられるメリットがあり、近年ではさまざまな需要があります。

1-1.ビジネスモデル

訪問鍼灸のビジネスモデルは、施術者が被保険者である利用者にサービスを提供し、一部負担金の受取と同時に療養費の受領を委任されます。施術後に保険者に対して療養費を申請し、療養費を受け取る仕組みです。

鍼灸院開業時の主な収入源は施術料となります。公的医療保険が適用されるサービスでは、利用者が支払う1割から3割の自己負担分と、保険者から支給される7割から9割の療養費が施術料です。料金は厚生労働省が鍼灸料を全国一律で定めており、定期的に料金改定を行っています。保険者は地方自治体や健康保険組合であるため未払いリスクがなく、安心のビジネスモデルです。

鍼灸資格者として訪問鍼灸を独立開業する場合、個人事業主や法人として開業するほか、フランチャイズに加盟して開業する道もあります。フランチャイズに加盟するメリット・デメリットや手持ちの資金、オーナーとしての知識・経験などを考慮して、フランチャイズに加盟するかどうかを検討しましょう。

出典:厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給について」

2.訪問鍼灸の開業に必要な手続き

訪問鍼灸開業には、さまざまな手続きが必要です。保健所や地方厚生局、税務署といった公的機関へ届出を行います。開業する場所や形態によって必要になる書類を確認することが重要です。以下では、出張鍼灸師として開業準備に必要な手続きを解説します。

2-1.保健所への届出

訪問鍼灸を開業する場合、保健所への届出が必須です。次の2種類の書類のうち、どちらかを提出する必要があります。

自宅以外の場所で訪問鍼灸の施術所を開設する場合、法人や個人を問わず施術所開設届の届出が必要です。事前に施術所の構造や設備、衛生環境などがチェックされます。具体的には、「施術室・待合室の広さ」「施術に使用する器具・手指の消毒方法」「採光・換気の状態」など、施設運営に欠かせない事項です。

自宅を拠点として、出張専門の訪問施術事業を開始する場合は、出張施術業務開始届を提出します。施術所開設届と異なり、事業所を住所登録することはできません。登録住所が住民票に記載されていること、個人に限定されていることといった細かな条件があることに注意が必要です。新たに人材を雇用する場合は、施術所開設届の提出が必要になります。

2-2.地方厚生局への届出

訪問鍼灸の開業には、地方厚生局へ「受領委任制度」に関する届出が必要になります。受領委任制度とは、医療費の一部をお客様から受け取り、お客様に代わって療養費の支給申請と受領が可能になる制度です。保健所への届出を済ませた後に申請できる手続きです。

受領委任制度を申請すると、「保険適用の施術ができる」「療養費を受け取ることで売上が確保できる」といったメリットがあります。届出には要件を満たした施術管理者がいることが必須です。また地域ごとに異なるルールがあることに気をつけましょう。

生活保護を受給しているお客様に保険適用の施術を行う場合は「生活保護法指定機関」に関する届出が必須です。地方厚生局や都道府県の窓口、またはオンラインで申請ができます。

2-3.税務署への届出

個人で訪問鍼灸事業を開始するときは、税務署へ事業者として「個人事業の開業・廃業等届出書」いわゆる「開業届」を提出します。開業届は開業してから1か月以内の提出が必要です。

開業届を提出すると、事業所得税の申告義務が発生します。年に1度の申告を準備することで、売上や費用、収益の実態を把握することが可能です。また、屋号で銀行口座の開設ができるなどの恩恵を受けられます。

3.訪問鍼灸の開業・経営を成功させるためのポイント

初めて訪問鍼灸を開業する場合は、不安を感じるのが実情です。経営者として営業を成功に導くためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。ここからは訪問鍼灸の開業から開業後の経営までを成功させるためのポイントについて解説します。

3-1.独自の強みを明確化する

訪問鍼灸の経営を軌道に乗せるには、独自の強みを明確にすることが必須です。強みがあると、他の鍼灸院と差別化を図ることができるためです。

分かりやすいコンセプトを設定すると、強みを明確に打ち出す手助けになります。「特定の年代や症状に特化している」といった具体的な差別化がおすすめです。

また、価格設定・価格表示も重要です。施術金額を明確に表示することで、お客様は安心して施術を依頼できます。施術金額が分かりにくいと、お客様は不安に感じてしまい、訪問鍼灸を依頼できません。

3-2.需要のある場所で開業する

訪問鍼灸だけではなく実店舗での施術も提供する場合は、店舗を設置する場所が重要です。多くのお客様を集められるような場所に店舗を設置しましょう。見当違いな場所で開業すると、お客様の来店につながりません。

駅やバス停、主要道路など、人が見つけやすい場所は開業場所として適切です。スーパーマーケットや美容室といった人が集まる店舗の周辺も来店を見込めます。出店時に通行者の導線を確認しましょう。

ビルの2階以上の場所に初めての店舗を選ぶのはおすすめできません。路面店と比べると人目につきにくく、集客を広告宣伝に頼ることになるためです。開業資金と家賃との兼ね合いを考慮しながら、営業しやすい立地を選びましょう。

3-3.自費メニューを導入する

鍼灸院経営を軌道に乗せるためには、保険適用の施術だけでなく自費のメニューを取り入れることが必要です。保険請求のみでは十分な収入がなかなか得られません。

鍼灸施術の効果を高めるような魅力的なオリジナルメニューを用意しましょう。お客様が試したいと思えるようなマッサージを取り入れ、訪問鍼灸マッサージ事業として展開するのも方法の1つです。

効果的な自費メニューを考案したら、お客様へ積極的に声がけします。多くのお客様に試してもらい、効果を実感してもらうのが目的です。リピーターだけでなく新規のお客様にもオリジナルメニューを試していただき、保険適用外の施術でも効果があることを知ってもらいましょう。

3-4.Web集客・MEO対策を実施する

鍼灸院の経営を成功させるには、Web集客やMEO対策が重要です。まずはホームページを制作し、Web集客の柱を作りましょう。お客様の自宅に訪問して施術する訪問鍼灸では、実店舗のように看板を出して集客することはできません。そのため、Web集客に力を入れることが大切です。実店舗を構えている場合でも、訪問鍼灸を希望するお客様は実店舗に来店しないため、店頭の看板以外の集客方法が欠かせません。

実店舗を構えている場合は、ホームページだけではなく、Googleマップに関する対策が必要です。MEO対策というGoogleマップの検索順位を高めるための対策を実施することで、実店舗の集客を増やすことにつながります。

まとめ

訪問鍼灸の開業には、保健所や地方厚生局、税務署への届け出など、必要な手続きが複数あります。これらの手続きを確実に行うことで、安心して開業準備を進めることができます。開業後は、地域のニーズをしっかりと把握し、効果的なマーケティング戦略を立てることが重要です。

また、自費メニューの導入やWebを活用した集客も、経営の成功には欠かせません。独自の強みを明確にして競争力を高めることで、安定した収益を確保しやすくなります。開業から経営までを成功させるためのポイントを押さえた上で、自信を持って訪問鍼灸のビジネスを始めてください。

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