今後どうなる?鍼灸師の将来性

日々、医療が発達していく中で鍼灸師の将来を不安視している人もいるでしょう。現代医学に慣れ親しんだ若者層が年齢を重ねていったとき、はたして鍼灸師の需要が保たれるのかは確かに重要な問題です。しかし、鍼灸師には鍼灸師にしかできないフィールドがあります。どんなに新しいテクノロジーが生まれても、鍼灸師の仕事が完全になくなることはないでしょう。むしろ、鍼灸師と最新医学は共存が可能です。この記事では、鍼灸師の需要や将来性について考えていきます。

 

☆鍼灸師の需要は増加傾向!

鍼灸とは「鍼(はり)」と「灸(きゅう)」を中心に患部を治療する東洋医学の一種です。しかし、日本をはじめ、世界的には西洋医学に基づく医療施設、テクノロジーが浸透しています。そのため、鍼灸の専門家である「鍼灸師」の需要が減っていくのではないかと危惧する声も生まれています。ところが、実際には鍼灸師を求める声が途切れることはありません。むしろ、これからの時代、鍼灸師の需要はますます増加傾向にあります。理由としては、まず「病気予防に対する考え方」の変容です。すでに始まっている高齢化社会において、病気とどうやって向き合うかに人々の意識は高まってきました。そして、「そもそも病気にならないための体づくり」に目が向けられるようになったのです。その結果、病気や怪我への対処療法としての西洋医学以上に、体のツボを刺激して自己治癒能力を向上させていく東洋医学への注目度が上昇してきました。鍼灸のメリットは多くの人々に見直されています。また、高齢化社会では老人ホームなどの介護施設で行う「健康維持方法」や「リハビリテーション」の充実が求められています。高齢者の体力を奪わないうえ、薬アレルギーなどとも無関係な鍼灸は理想的な健康法だといえるでしょう。そのほか、鍼灸師の活躍できるフィールドが広がってきたのも、需要の高まりに関係しています。鍼灸師はクリニックだけでなく、訪問リハビリテーションなどにも招かれるようになりました。鍼灸師の仕事は以前よりも多様化しているのです。

 

☆鍼灸師の活躍できるフィールド

鍼灸の効果は、健康面だけでなく美容や学問の分野からも注目を集めています。鍼灸師は鍼灸クリニックにこだわらず、さまざまな場所でスキルを活かせるようになっています。たとえば、多くのエステや美容クリニックで鍼灸は取り入れられています。鍼灸には肌のターンオーバーを活性化させたり、血液循環を改善したりする効用があるため、男女を問わず非常に人気のある美容法です。また、スポーツ選手などのフィジカルケアにも鍼灸は利用されています。多くのスポーツではドーピング検査があるので、選手は安易に薬品やサプリメントを服用できません。そこで、薬を使わずに筋肉のトラブルへと対処できる鍼灸が重宝されているのです。介護施設や福祉施設でも鍼灸は幅広く利用されています。高齢者になると、体にメスを入れるには体力が足りないケースが増えてきます。そのため、鍼灸による病気の治癒を望む高齢者は少なくありません。そして、鍼灸を学ぶ人のために教育機関でも鍼灸師を招くようになりました。将来の鍼灸師を育成する役割だけでなく、学問として鍼灸を研究したい人もいるため、大学などで「鍼灸学」という学科が設立されています。もちろん、近い将来でも変わらず鍼灸接骨院などの医療施設で働く鍼灸師もいるでしょう。特に、内臓の不調や自律神経の乱れに鍼灸は効能を見せるので、多くの医療施設で鍼灸師は活躍しています。鍼灸はさまざまな分野に応用が効く医療です。これからも意外な分野から鍼灸の需要が生まれていく可能性があるでしょう。

 

☆注目が集まっている東洋医学の可能性

鍼灸師による施術は古くから伝わる東洋医術の一種です。東洋医学は西洋医学以上の歴史があり、文明や科学が発達する以前から人々の暮らしを支えてきました。西洋医学との最大の違いは、「薬」や「手術」に頼らない点でしょう。西洋医学の基本的な概念は「病気になると患部を体内から治さなければいけない」というものです。しかし、そのために体を傷つけたり刺激の強い薬を服用したりする行為を東洋医学は「よし」としません。東洋医学の基本は「体本来の自然治癒力を高める」点にあり、あくまでも体外からの働きかけによって器官の動きを活性化しようとします。また、東洋医学では患部に直接触れなくても、患部とつながっている「ツボ」を的確に刺激すれば症状は改善されていくと考えます。鍼による強い刺激や、灸による熱によってツボに働きかける鍼灸は、東洋医学の代表的な術式だといえるでしょう。副作用が少ないことも鍼灸の大きな特徴です。さらに、鍼灸は西洋医学だと原因や治療法がわからなかったアレルギーなどの症状改善も実現させています。そのため、東洋医学や鍼灸は西洋医学が主流である欧米諸国からも高い関心を持たれるようになっているのです。鍼灸を取り入れる欧米の医療施設は増えてきており、鍼灸師の需要はアジアだけにとどまらずこれからも広がっていく可能性があります。

 

☆高齢業界だけじゃない!美容やスポーツでも

美容やスポーツの分野では、鍼灸師の需要が特に高まっています。高価な薬品やサプリメントに頼ることなく実践できる健康法が多いからです。中でも、「耳ツボダイエット」は女性を中心に多くの人が行っています。耳には毛細血管や神経が集まっており、健康のツボがたくさんあります。そこで、耳のツボを上手に刺激してダイエットに役立てるのが「耳ツボダイエット」の概要です。たとえば、耳にある「消化を助けるツボ」を押せば、食べたものがしっかりと消化吸収されるのでぜい肉になりません。食事制限を行っても十分な栄養価が摂取できるようになり、だんだん体が多くの食事量を求めなくなっていきます。「全身の気の流れを整える」のも鍼灸の持つ役割です。体のツボを正しく刺激していき、「気」と呼ばれるパワーをコントロールします。その結果、ホルモンバランスが整って肌荒れやむくみ対策、不妊治療などにも活かせます。健康や美容に関心がある層から鍼灸が注目されているのは、安全かつ副作用が少ない施術だからです。たとえば、手術を行ってしまうと患部が治ったとしても手術跡がふさがるまでに少なくない時間を要します。その間、仕事や家事を休まなくてはいけません。スポーツ選手だと、運動神経や筋力に悪影響を及ぼす恐れもあります。薬を使った治療でも同様に、アレルギーなどの危険は消えないでしょう。そこで、スポーツ選手は怪我からのリハビリの際に鍼灸を利用し、体力を維持したまま回復を目指すことも珍しくありません。

 

☆開業を見据えた将来像

鍼灸師としてさらなる活躍を目指すなら、より専門性の高い分野への参入も検討しましょう。まず、「スポーツ鍼灸」は幅広いスポーツチーム、個人競技者などから信頼を得ている鍼灸です。スポーツ鍼灸師は競技者が毎日行う体のメンテナンス、健康管理などを多角的にサポートします。鍼灸の施術だけでなく、東洋医学の知識を活かして食事や睡眠などの生活習慣にまで言及します。スポーツ鍼灸師は世界的にも広がっている仕事ですが、絶対的な人数が不足しているのが現状です。そのため、スポーツ鍼灸を学んだ人には多くの機会が広がっていくでしょう。また、後進を育てるための教育者としての役割も期待されます。次に、女性の利用者に特化した「レディース鍼灸」も注目の分野です。女性には「不妊症」「更年期障害」「生理不順」といった健康の不安が多く、専門的な治療を必要としている人も少なくありません。加えて、美容法の一環として鍼灸を求めている女性もいます。レディース鍼灸では、施術とともに女性のメンタルにも寄り添えるコミュニケーション能力が重要視されます。西洋医学の範疇では解決策を見出せなかった女性の悩みに向き合う、やりがいのある仕事といえるでしょう。そして、「ヘルスケア鍼灸」も需要が増えていくと予想される分野です。鍼灸といえば、肩こり、腰痛、筋肉系のトラブルの治療法として知られています。しかし、ヘルスケア鍼灸ではより深く体調不良や病気に関わっていきます。そのため、鍼灸師に求められる知識量は増えますが、たくさんの患者の健康を守れる重要な仕事です。

 

☆鍼灸師の将来は選択肢が広がる

将来性について不安がささやかれもする鍼灸師ですが、実際のところ、鍼灸師の未来は明るいといえます。薬や手術による治療が行えない人のため、鍼灸がなくなることはまずありません。そのうえ、東洋医学について世界中で再評価の傾向が強まっています。むしろ、鍼灸師の選択肢は広がっていくでしょう。これまでのように医療としての鍼灸はもちろん、スポーツや美容の現場でも鍼灸師が活躍できる可能性があります。鍼灸師がより深く、社会へと貢献できる時代が迫ってきているのです。

 

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