鍼灸師の開業資金はいくら必要?事前の準備を忘れずに

鍼灸師は鍼灸院をはじめ、美容業界や介護業界など活躍できるフィールドが広いという特徴があります。また、鍼灸師としてスキルを磨いた後に、独立開業を考えている人も多いはずです。ただ、開業するとなると、どのような準備が必要になるのか不安を感じる人もいるのではないでしょうか。そこで、ここでは必要な資金額や資金の調達方法など、開業に欠かせないお金にまつわるトピックスについて解説します。

 

☆業態によっても違う?鍼灸師の開業費用

鍼灸師の開業に必要となるお金は、「自分で鍼灸院を開くのか」「往診専門にするのか」により、費用が大幅に変わってきます。鍼灸院を新規開業する場合、おおむね300万~500万円程度の費用がかかるのが相場だといわれています。大体300万円前後の費用はかかるものと考えておくと良いでしょう。
一方、同じ開業であっても往診専門の場合、すでに車を持っていれば10万円程度の資金で済む場合があります。往診専門なら、車内を利用したり訪問型にしたりするなどの工夫を行うことで、テナント代などを効率的に節約できます。また、歩行困難者など鍼灸院まで足を運ぶのが難しい人にとって、往診専門は非常に便利で喜ばれやすいのが特徴です。資金をあまりかけずに開業したかったり、鍼灸院に通うのが難しい人のサポートがしたいと考えていたりする場合は、往診専門を視野に入れるのも1つの手といえます。

 

☆往診専門の鍼灸師になる場合

往診専門の鍼灸師になる場合は、物件を用意しなくて済むぶん不動産取得費などを節約でき、開業費用は少なめの傾向です。開業するにあたっては、施術道具やタオルなど、最低限の治療用品や備品を用意すれば、スムーズに開業できます。ただし、車を持っていない場合は、車の購入費用が別途必要になる可能性があるので、注意が必要です。「どのような車を使用するのか」「新しく車を購入する必要がありそうか」など、しっかりと開業前にイメージを固めておきましょう。

 

☆自分の鍼灸院を開業する場合

自分で鍼灸院を新規開業する場合、まず必要になるのが「物件」です。開業用の物件を用意しないと、さまざまな準備を進めることができません。用意には理想の物件を探す手間がかかるだけではなく、敷金や仲介手数料といった不動産の取得に必要な費用や、そのほかに内装費などもかかるのです。ただし、自宅の一部を改造して開業する場合であれば、物件を用意しなくて済むぶん、開業費を大幅に抑えられます。
また、物件は取得費用のほかに店舗を構えることで家賃や光熱費といった、毎月のランニングコストも発生するのを念頭に置く必要があります。したがって、開業費は物件や備品などを準備するための費用とは別に、当座の運転資金も多めに確保しておくのがポイントです。具体的に必要となる費用については、次の段落で詳しく内容を見ていきましょう。

 

☆開業に必要な費用にはどんなものがある?

鍼灸院の開業にあたり、必要となる主な費用の内訳は以下の通りです。
まず、鍼灸院を開業する場合は「不動産取得費用」がかかります。不動産取得費用とはその名の通り、事務所や店舗を取得するためにかかる費用のことです。家賃や賃貸手数料なども、この内容に含まれます。不動産取得費用は借りる店舗の立地や広さなどにより、必要となる費用が大きく異なります。また、不動産会社との交渉次第では、費用が変動する可能性もあるでしょう。
次に、必要となる費用は「備品代」です。これはタオルやイスといった、施術に必要となる備品を用意するための費用を指します。備品はこだわって選んだりグレードの高いものを用意したりするほど、費用も高額になる可能性が高いでしょう。
それから、チラシ代やwebサイト運営費などの「宣伝費用」も、開業において欠かせないものです。物件や備品を用意して開業の準備を万端に整えたとしても、お客様が必ず来院するという保証はありません。そもそも、鍼灸院が開業したという情報がお客様の耳に届いていなければ、来院を期待するのは難しいと考えられます。そこで、多くのお客様の来院を促すために、重要なのがチラシやwebサイトでの宣伝なのです。チラシの作成は業者やクオリティによって、必要な費用が異なります。また、webサイトを作成して継続的に運営するには、保守や管理などにかかる運営費が必要となります。webサイトは作成してしまえばそれで終わりというわけではなく、運用するには継続的な費用がかかることを、きちんと把握しておくことが大切です。
これらのほかに、治癒道具や内装工事費などの「設備投資費」も必要です。治療用品や医療機器などは、お客様の満足度を左右する重要なポイントといえます。開業で必須となる費用なので、資金をしっかり確保しておくのが肝心です。それに加えて、お店を改修するための内装工事費は、求める内装のグレードにより費用が大きく変動します。お客様の来店率やリピート率にも影響をおよぼす重要な要素であるため、うまく資金と相談しながら内装決めを行うのが肝心です。
さらに、「当座の生活費」も不可欠な資金といえます。「なぜ当座の生活費が必要なのか」というと、これは鍼灸院の運営が軌道に乗り、継続的な売上が確保できるようになるまでの保険になるからです。お店を開業しても、すぐに繁盛したり固定客がついたりするとは限りません。なかなかお客様の来院がなければ、毎月の売上が思うように確保できない可能性も考えられます。このような事態に陥った際にも、焦らず自分の生活を確保できるように、あらかじめ当座の生活費を用意しておく必要があるのです。

 

☆開業資金はどう確保したらいい?

鍼灸院を開業する場合、特に多額の費用がかかることになります。したがって、鍼灸院を開業するにあたっては、事前に綿密な資金計画を練るのが重要なのです。それでは、不動産取得費や設備費などの開業資金は、どのようにして確保すれば良いのでしょうか。具体的な資金の調達方法は、以下の3つが挙げられます。
1つ目は「自己資金」によるものです。自分で働くなどしてお金を貯蓄し、そこから費用を捻出するケースです。2つ目は「親などから借りる」という方法もあります。貯蓄が充分にできていなかったり、早く開業を目指したかったりする場合は、親族に相談をしてみるのも手です。3つ目には「金融機関から融資を受ける」という選択肢が挙げられます。国や金融機関などからお金を借りて、開業資金にあてるという方法です。ただし、お金を借りるからには返済義務が生じるため、安易な気持ちで融資を受けないよう、きちんと気持ちを固めておくのが肝心です。

 

☆日本政策金融公庫の融資を利用しよう

自己資金が足りない人は、日本政策金融公庫の融資を受けるのがおすすめです。日本政策金融公庫とは、政府出資による金融機関を指します。長期的な経済の活性化という国の意思が反映される金融機関であるため、企業や創業者に対して積極的な融資を行っているのが特徴です。さらに、日本政策金融公庫は「無担保・無保証人制度」の利用や、「長期間・低金利での融資」が可能というメリットがあります。
ただし、融資にあたっては創業計画書などの各種必要書類を提出したり、面接をしたりする必要が生じます。また、融資を受けるためには、ある程度の自己資金が必要です。なぜなら、自己資金が多いほうが、きちんと返済してくれる可能性が高いと判断されるケースが多いからです。自己資金は融資にとって重要な項目であるため、ある程度のまとまったお金はあらかじめ各自で確保しておくことが求められます。

 

☆将来開業を目指すならまずはお金を貯めよう

将来開業を目指すのであれば、資金準備をきちんとしておくのが大切です。往診専門なら自己資金が少なくても開業しやすい傾向ですが、鍼灸院の開業には多額の費用が必要となります。開業の形態により準備する資金も大幅に変わってくるため、どのような形での開業を目指すのかをはっきりと決めておくのが重要になるでしょう。
また、自己資金は多ければ多いほど望ましく、選択の幅も広がります。最低限、必要な資金の3割以上は準備しておくと安心です。万が一、資金面の不安がある場合はまず鍼灸師として企業に勤務し、働きながらスキルアップしつつ、必要なお金を貯めていくという道もあります。開業に向けて将来の計画を立てて、自分に合った方法で着実に資金を貯めておくことが、理想とするビジネスを実現させる近道になるはずです。

 

☆具体的な資金計画を立ててスムーズな開業を目指そう!

鍼灸師が開業をするにあたっては、それなりの自己資金が必要になるケースが多く見られます。したがって、開業を目指すのであれば、事前にしっかりとした資金計画を立てておくのが重要なのです。物件を借りて鍼灸院を開くのか、それとも往診専門にするのか、それに伴いそれぞれにかかる費用はいくらなのかなど、必要なお金を計算しておく必要があります。それから、自己資金が足りない場合の調達方法なども、あらかじめ調べておくのがポイントです。具体的な計画を立ててから行動を起こし、スムーズな開業を目指しましょう。

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