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鍼治療の効果が出るまで何回くらい?自律神経を整えるのに必要な期間

鍼治療の効果が出るまで何回くらい?自律神経を整えるのに必要な期間

鍼を用いた施術は、自律神経失調症の症状改善に効果的な治療法の1つです。自律神経は、体内で生命維持機能を調整する重要な役割を果たしており、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、さまざまな不定愁訴が現れる場合があります。

鍼施術はこのバランスを整える手段として注目されていますが、その効果や必要な期間については個人差が大きいです。当記事では、自律神経失調症の原因や症状を解説し、鍼による施術の効果や施術回数・期間の目安について詳しく紹介します。

1. 自律神経・自律神経失調症とは

自律神経とは、人間の意思とは関係なく24時間働き、呼吸・体温・消化などの生命維持機能を調整している神経です。自律神経は全身に張り巡らされ、ストレスや環境の変化に応じて自動的に身体を調整します。

自律神経は役割により、交感神経・副交感神経に分類できます。それぞれの神経の主な働きは、以下の通りです。

交感神経 活動する際に働き、体内でアクセルの役割を果たす神経
副交感神経 休息する際に働き、体内でブレーキの役割を果たす神経

健康的な生活を送るためには、交感神経と副交感神経のバランスを正常に維持する必要があります。自律神経失調症とは、2種類の神経のバランスが崩れ、不定愁訴が発生している状況です。

西洋医学的観点で自律神経失調症と判断される際には通常、臨床検査で問題を発見できない・精神疾患の診断も受けていないなどの条件を満たす必要があります。特定の病気や異常が理由でトラブルが出現している場合、自律神経失調症とは言えないことに注意が必要です。

出典:ERCA|独立行政法人 環境再生保全機構「Q7-4 自律神経にはどのような種類があり、どのような働きをしているのですか?」

出典:日本臨床内科医会「自律神経失調症」

1-1. 自律神経失調症の主な原因

自律神経のバランスが崩れる原因は主に、以下の通りです。

  • 精神的ストレス
  • 身体的ストレス
  • 不規則な生活
  • 食事の偏り

精神的ストレスとは、不安や怒りといった不快な感情を引き起こすストレスです。身体的ストレスとは、疲労・慢性的な寝不足・気圧の変化などを指します。女性の場合は生理周期や更年期によるホルモンバランスの変化も、身体的ストレスの1つです。

1-2. 自律神経失調症の主な症状

自律神経は全身の調整を担当している神経にあたるため、バランスが崩れると、さまざまな症状が出現します。自律神経失調症の主な症状は、以下の通りです。

  • 肩こり、腰痛
  • 頭痛
  • 不眠
  • 胃腸の不調
  • 関節の痛み
  • 便秘
  • 動悸、息切れ
  • 焦燥感、不安感 など

上記の症状は単独ではなく「頭痛がひどく、倦怠感もある」などのように、複数同時に出現するケースもあります。自律神経失調症の症状は一旦「よくなった」と感じた際にも、悪化・再発しやすいことが特徴です。

自律神経失調症の症状が悪化すると、日常生活に大きな支障が生じるリスクもあります。例えば、不眠は、集中力の欠如によって仕事の生産性を低下させる原因です。不眠が続けばイライラや不安感は強くなり、快適に日常生活を送れません。

1-3. 鍼治療と自律神経の関係性

自律神経失調症は、WHO(世界保健機関)のセミナーで作成された鍼の有効性が主張される疾患リストに含まれています。疾患リストには頭痛、不眠、神経症なども含まれることから、鍼施術は自律神経失調症以外の神経系疾患にもアプローチが可能です。

出典:仙台赤門医療専門学校「第10回『WHO(世界保健機関)が定めた鍼灸の適応症』<赤門教職員コラムリレー>」

鍼施術では一般的に、呼吸と関係性の深い筋肉(胸鎖乳突筋・肩甲骨内側の筋肉など)を調整し、自律神経へと働きかけます。筋肉の調整によって呼吸が整うと、自律神経にも良い影響を与えられると考えることが理由です。

鍼施術では鍼の刺激によってリラクゼーションを促し、身体の深部から自律神経に働きかけるケースもあります。リラクゼーションで心身のストレスを軽減すれば、自律神経が本来の機能を発揮しやすくなります。

2. 鍼治療で自律神経を整えることは可能?

鍼施術の作用は完全には解明されていないものの、神経系機能へよい影響を与えることが期待されています。

出典:eJIM「https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/01.html」

鍼施術で自律神経にアプローチした場合に期待される身体の変化は、以下の通りです。

2-1. 鍼治療が自律神経にもたらす効果

自律神経には、皮膚や筋肉に刺激が与えられた際、活性化する特性があります。鍼施術では鍼の刺激で自律神経を活性化させ、バランス調整を狙うことが通常です。自律神経をバランス調整した結果が体内の各部位に影響すると、不眠・胃腸の不調といったトラブルの軽減を図れる可能性もあります。

頭皮鍼も、適度な刺激によって自律神経にアプローチする施術方法の1つです。頭皮鍼では鍼によって脳内にある「視床下部」と呼ばれる部分を刺激し、副交感神経のスイッチが入りやすい状態へと導きます。

ただし、鍼施術はあくまでも自律神経をバランス調整したり心身に出現しているトラブルをケアしたりするための手段の1つにすぎません。自律神経のバランス調整には、西洋医学のアプローチが必要となるケースもあります。

つまり、「鍼施術で自律神経を整えられる」とは言い切れないものの、悩みやトラブルの軽減・解消につながるヒントを得ることは可能でしょう。特に気になるトラブルがある場合は鍼施術により、不快感を軽減できる可能性もあります。

出典:eJIM「https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/01.html」

2-2. 自律神経失調症の鍼治療における期間・回数の目安

鍼施術の効果が出るまでの期間や自律神経への影響には個人差があるため、「何回通うとよい」といった明確な基準を示すことは困難です。1つの目安としては、通い始めにあたる時期は週1~2回のペースを意識して、5~15回の施術を受けましょう。5~15回の施術によって身体の変化を感じた後は徐々に頻度を減らし、ペースを落として通いましょう。

自律神経に関わる身体の不調が重度の場合、変化を実感するまでにかかる期間は長くなる傾向があります。変化を実感するまでにかかる期間は体質によっても変化するため、鍼灸師とよく相談し、通い方を調整しましょう。

3. 自律神経を整えるために気をつけたいこと

西洋医学・東洋医学のいずれの観点から自律神経にアプローチするとしても、生活スタイル全般や物事の考え方を見直して、悩みの解消や再発予防に努めることは重要です。以下では、自律神経を整えたい場合の生活上の注意点やポイントを紹介します。

  • 食生活の改善
    朝食は、副交感神経から交感神経へ切り替える際のスイッチとして機能する重要な食事です。朝食は抜かず、決まった時間に毎日食べる習慣を付けましょう。3食の内容は栄養バランスを考え、主食・肉や魚を含む主菜・野菜の副菜を揃えることが基本です。その上でストレスケアや自律神経のコントロールをサポートするビタミンC・ビタミンA・ビタミンEを意識的に摂るのもよいでしょう。
  • ストレス解消
    ストレスは早期に解消することが重要です。状況や体調に応じたストレス解消法を理解しておき、イライラや不安を感じた時に実践しましょう。趣味がない人にはヒーリングミュージックを隙間時間に聞いたり、アロマテラピーを試したりするのがおすすめです。思い切り泣いたり笑ったりして感情を発散することによっても、ストレス解消をサポートできます。
  • 生活習慣の見直し
    就寝前には副交感神経が優位の状態を作るため、入浴時は38~40度程度のお湯にゆっくりとつかります。就寝する1~2時間前にはスマホやパソコンの電源を切り、部屋の照明を落として、睡眠の質を高めましょう。起床後は交感神経のスイッチを入れるためにカーテンを開け、日光を浴びてください。

自律神経を整えるためには適度な運動習慣を作り、血行を促進する対策もおすすめです。もともと運動習慣のなかった人は、1回30分程度のウォーキングに挑戦するとよいでしょう。エスカレーターの使用を控える・電車の中で座らずに姿勢良く立つといった習慣をつけることによっても、血行を促進できます。

まとめ

自律神経失調症は、多くの人々が悩む現代病の1つであり、鍼施術はその症状改善に役立つ可能性があります。鍼施術によるリラクゼーションや筋肉調整は、自律神経のバランスを整える助けとなり、不眠や胃腸の不調といった症状の軽減が期待できるでしょう。

しかし、個人差があるため、施術の効果を実感するまでの期間は異なります。日常生活の見直しや西洋医学との併用も重要です。自律神経のバランスを保つために、自分に合った方法を見つけ、継続して取り組むことが大切です。

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