育毛鍼とは?頭皮にあるツボを刺激して薄毛にアプローチ
頭部には、経絡(けいらく)と呼ばれるツボが複数あります。鍼でツボを刺激することで、さまざまな身体の問題にアプローチでき、そのうちの1つが育毛に対するアプローチです。
例えば「百会(ひゃくえ)」や「通天(つうてん)」と呼ばれるツボは、頭皮の血行にアプローチして、毛根に栄養が届きやすくなると言われています。
当記事では、育毛鍼がどのようなものなのか解説し、実際に育毛への作用が期待できるツボにはどのような種類があるのか紹介します。
1. 育毛鍼とは?
育毛鍼とは、薄毛の悩み解決を目的とした鍼の一種です。毛量が減る主な原因の1つに、頭皮の血行不良が挙げられます。皮膚の血行が悪いと毛根の毛乳頭や毛母細胞に栄養が十分に届かず、毛髪の健康が損なわれる場合があるためです。
育毛鍼は、頭皮にある特定のツボを鍼で刺激して血の流れを良くし、髪の毛に必要な栄養素が行き渡るのを助けます。これにより、髪が元気になったり、新たに髪が生えたりする増毛効果が期待できる頭髪メンテナンスの1種です。
また、鍼による刺激は自律神経を整え、全身の調子も整える働きがあるとされています。ただし、すべての方に効果が表れるとは限りません。
1-1. すべての薄毛に有効というわけではない
育毛鍼は、血行不良や自律神経の乱れが原因で起こる薄毛には、効果が期待できる施術です。しかし、薄毛問題の原因によっては、効果が期待できない場合があることを理解しておきましょう。特に、毛根の機能が失われている場合や、AGA(男性型脱毛症)により髪のボリュームが減った場合はあまり効果が得られません。
育毛鍼の主な役割は血行に作用し、自然治癒力を高めて発毛・育毛に関わる細胞を元気にするというものです。完全に死滅してしまった毛根を復活させることはできません。また、AGAの主な原因であるDHT(ジヒドロテストステロン)を抑制する力はないため、別の方法を探したほうがよいでしょう。
また、育毛鍼は生活習慣や体質、年齢、ストレス状態などによって、効果の個人差が大きい施術です。鍼により血行にアプローチしても、生活習慣や頭皮環境が乱れている場合はよい結果が得られない可能性があります。施術期間は個人差がありますが、通常は週に1回のペースで数か月から半年程度継続して通うと、ケアの効果を実感できる場合が一般的です。
2. 育毛鍼で薄毛にアプローチできるツボはどこ?
鍼施術で刺激を与える「ツボ」は、経穴(けいけつ)とも呼ばれており、世界的に認められている場所だけでも361個あります。また、認定はされていないものの、鍼やマッサージで刺激するとさまざまな効果があるとされる場所も合わせると、全身で約700もの数があるのがツボです。
ここからは、薄毛へのアプローチに有効とされるツボを9か所紹介します。
2-1. 百会(ひゃくえ)
百会は頭のてっぺんに位置しており、身体のさまざまな経路が集まる重要なツボです。頭頂部のほぼ真ん中、左右の耳の上端を結ぶ線と、眉間から後頭部に向かって伸びる中央線が交わる場所にあります。
百会の刺激が頭皮への血行を良くし、毛根に栄養が届きやすくなることで代謝にもアプローチして、髪の成長のサポートが期待できるツボです。また、自律神経の調整によって癒やされれば、脱毛の原因になるストレス軽減にもつながるでしょう。
2-2. 通天(つうてん)
通天は、百会から指の幅2本分ほど斜め前に位置しており、頭頂部に左右対称に2か所存在します。頭皮を柔軟にして血行に作用し、健康な髪の毛の生え変わりを助ける効果が期待できるツボです。
特に、円形脱毛症や抜け毛の進行を遅らせる可能性があるとされています。また、白髪の減少にも効果的とされ、髪にツヤやコシを与える「美髪のツボ」とも呼ばれるツボです。百会と組み合わせて刺激することで、さらに育毛にアプローチできるでしょう。
2-3. 天柱(てんちゅう)
天柱は、襟足の生え際にある2本の太い筋肉の外側のくぼみに位置します。天柱は頭と身体をつなぐ重要な血管や神経の通り道にあり、頭部の血流をスムーズにする効果が期待できるツボです。
血流の悪化が原因で起こる抜け毛や細毛、円形脱毛症に効果的とされます。また、風池と併せて刺激すると、特に後頭部の抜け毛の緩和に寄与するツボです。肩こりや疲れ目、目の充血や視力低下の緩和、自律神経の安定にも役立つとされ、百会と並んで万能のツボとも呼ばれます。
2-4. 風池(ふうち)
風池は、天柱のすぐ外側で1cmほど上に位置します。刺激すると首・肩周りや頭部の血行にアプローチして、抜け毛や円形脱毛症に効果が期待できるツボです。また、顔色のトーンアップやデトックス効果、めまいの緩和にも役立ちます。
風池は、風の邪気が体内に入ってたまる場所とされ、風邪による頭痛や咳、節々の痛みが発生した際によく押されるツボです。肩こりや目の疲れ、鼻炎などの症状にも役立ち、自律神経を整える効果も期待できます。
2-5. 完骨(かんこつ)
完骨は、耳の後ろの乳様突起という出っ張った骨の下端の後ろ側にあるくぼみに位置します。血行をサポートして代謝機能を整え、自律神経に働きかけることで、潤いのある髪を育てる効果が期待できるツボです。
完骨への刺激は、ホルモン分泌の正常化や自律神経の調整にも役立ち、頭痛やめまい、眼の疲れ、顔のむくみの緩和にも効果が期待できます。首の凝りの解消や癒やし効果もあるとされ、集中力を高めたいときや疲れを感じるときにも有効です。特にストレス性の抜け毛に悩む方に向いています。
2-6. 角孫(かくそん)
角孫は、耳上部の髪の生え際に位置するツボで、耳を前方に折り曲げた時、耳の一番上が頭に触れる部分にあります。角孫への刺激は頭皮の血行をスムーズにし、髪の生え替わりのサイクルを正常化する効果が期待できます。また、抜け毛の予防や顔のたるみ防止にも役立つツボです。
また、目や耳の不調、歯痛などへのアプローチに有効とされ、特に耳鳴りによいと言われます。老廃物の排出をサポートし新陳代謝を高めることで、顔のむくみやたるみへのアプローチも期待できるでしょう。
2-7. 神庭(しんてい)
神庭は、両眉の真ん中から上、前髪の生え際の中心から1cm上に位置するツボです。「神」は精神や感情を、「庭」はそのまま庭を意味し、神庭への刺激は精神や感情を落ち着け、リラックスさせると言われます。
頭皮・顔の血流の滞りやフケ、頭皮のかゆみ、炎症の緩和、皮脂分泌のバランス調整へのアプローチが期待できるツボです。特に、産後の抜け毛やストレス性の抜け毛に対して効果が期待できます。頭痛や肩こりの緩和、睡眠不足やめまい、慢性鼻炎へのアプローチも期待できるでしょう。
2-8. 瘂門(あもん)
瘂門は、後頭部の真ん中、生え際から1cm程度上のくぼみに位置します。刺激により首と頭の血行にアプローチし、ハリとコシのある健康な髪を育てる効果が期待できるツボです。頭皮の緊張を和らげることで、緊張からくる頭痛にも効果があるとされます。
また、首のこりや鼻水の緩和、顔のむくみの減少へのアプローチにも利用されており、不眠症の緩和や眠気を払う効果も期待できるでしょう。頭の重みを利用するとほどよい力で押せるツボです。
2-9. 腎穴(じんけつ)
腎穴は、手のひら側の小指の第一関節の真ん中に位置します。正確には経穴ではなく反射区に分類され、各器官や臓腑につながる末梢神経の集中個所に当たる部分です。腎穴の刺激により、各器官や臓腑が活性化されると考えられています。
腎穴を刺激するとホルモンバランスが整い、抜け毛や白髪などの髪のトラブル全般に効果が期待できるでしょう。また、腎穴は体内の水分調整を行う腎臓へのアプローチとして使われることも多く、むくみの解消にもよいとされます。
まとめ
WHO(世界保健機関)が認定しているツボは361個あり、国内の鍼灸マッサージ師養成施設でもWHO標準が利用されています。頭皮へのアプローチが期待できるツボとしては百会や通天、天柱のほか、風池、完骨、角孫、神庭、瘂門、腎穴などさまざまです。
育毛だけでなく頭痛、肩こり、口内炎、便秘、浮腫、風邪、眼精疲労、生理痛、慢性疲労など、幅広い身体の不調にアプローチできます。抜け毛や薄毛をはじめ、身体の不調に悩まされている方は、鍼を検討してはいかがでしょうか。
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