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鍼治療における好転反応とは?副作用との症状の違いや注意点を解説

鍼治療における好転反応とは?副作用との症状の違いや注意点を解説

鍼の施術において好転反応とは、施術による回復の過程で発生する、軽症・一過性かつ後遺症がないきわめて軽い副作用を指す言葉です。東洋医学では瞑眩とも呼ばれ、鍼灸施術後の不調への診断として下されます。ただし、好転反応という言葉は医療や健康をうたう詐欺行為にも利用されるため、注意が必要です。

この記事では鍼灸における好転反応の定義やよくある症状、好転反応が出やすい人の特徴、重篤な副作用との違いを解説します。また、鍼灸施術にあたって好転反応の発症を避けやすくなる注意点も掲載しているため、これから鍼灸施術を受けたい方はぜひご覧ください。

1.好転反応とは

好転反応とは、体が回復する過程で、一時的に軽い不調を感じることです。東洋医学では、好転反応を「瞑眩(めんけん・めんげん)」とも呼びます。

鍼灸においては一般的に、鍼灸施術後に一時的にだるさや痛みなどを感じ、その後急速に回復することを好転反応としています。

1-1.鍼灸における好転反応(瞑眩)と一般的な「好転反応」の違い

ただし、「好転反応」は医療・健康・美容効果をうたった詐欺にも使われる言葉であり、注意が必要です。

本来の好転反応や瞑眩という言葉は、東洋医学に基づいた診断の1つです。一方で、健康食品を食べて体調不良を起こしたり、サプリメントを飲んでアレルギーを起こしたりした場合に使われる「好転反応」には、多くの場合科学的根拠がありません。

出典:厚生労働省「健康食品情報の冷静な受け止め方 Q&A」

非専門家が好転反応という言葉を使うとき、施術の失敗によるけがや、施術による副作用をごまかすために使っている可能性があります。医療系資格を持たない人が使う好転反応という言葉には特に注意しましょう。

出典:消費者庁「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」

1-2.好転反応と副作用の違い

厳密には、好転反応は副作用の1つです。ただし、激しい症状や慢性的な症状、後遺症の発生などがない点が一般的にイメージされる「副作用」との違いです。

鍼灸施術で使われる好転反応は、軽症・一過性かつ後遺症がないきわめて軽い副作用を意味し、短期間で急速に改善する特徴があります。また、鍼灸施術で重篤な副作用が起こることは極めてまれです。

出典:アメリカ国立医学図書館(National Library of Medicine)「Incidence of adverse reactions associated with acupuncture」

ただし、好転反応と危険な副作用の違いを、専門知識がない方が判別することは困難です。副作用を過剰に心配する必要はないものの、施術後に何らかの異常を感じたときは、我慢せずに担当した鍼灸師の方に相談しましょう。

2.鍼灸施術の好転反応によくある症状

鍼の施術でよく起こる好転反応について、1998年の医学論文「Incidence of adverse reactions associated with acupuncture」では以下のようにまとめています。いずれの症状も一過性の軽いもので、後遺症がなかったことが確認されています。

症状 発症率
疲労感 8.2%
眠気 2.8%
愁訴の悪化 2.8%
かゆみ 1.0%
めまいやふらつき 0.8%
吐き気や気分不良 0.8%
頭痛 0.5%
胸痛 0.3%

出典:アメリカ国立医学図書館(National Library of Medicine)「Incidence of adverse reactions associated with acupuncture」

出典:東京大学学位論文データベース「鍼治療の安全性情報確立のための臨床研究:有害事象の前向き調査」

ただし、下記の症状は好転反応には含まれないため注意しましょう。

  • 咳やのどの痛み
  • 息苦しさ
  • 激しい痛み
  • 広範囲の内出血など

まれに施術部位が内出血するケースはあるものの、好転反応として広範囲に内出血が起こることはありません。症状が現れたときは、必ず鍼灸師の方に確認しましょう。

2-1.好転反応が出やすい人の特徴

鍼の施術は、ツボへの刺激によって副交感神経や免疫系を活発化させ、体調不良を改善することを目的としています。そのため、好転反応の有無や症状の現れ方には、施術を受ける方の体調も大きく影響します。

好転反応が出やすい方の特徴は、下記の通りです。

  • 疲れている
  • 空腹状態にある
  • 睡眠時間が不足している
  • 初めて鍼灸施術を受ける

特に、初めて鍼灸施術を受ける場合、好転反応を発症しやすいため注意が必要です。初回の鍼灸施術では、術後に安静にする時間がとれるようにスケジュールを空けたり、事故を防げるように車の運転を控えたりするのがよいでしょう。

2-2.好転反応が出る一般的な期間

好転反応が出たときは、一般的に症状は1日~1週間程度で治まります。

ただし、好転反応が出る期間は、体調や体質も影響します。症状が長引く場合、すぐに担当した鍼灸師の方やかかりつけ医の方に相談しましょう。

2-3.このような症状は重篤な副作用・医療過誤の恐れあり

鍼灸施術に限らず、あらゆる医療行為の中で重篤な副作用や医療過誤が発生する可能性はゼロではありません。しかし、鍼灸は重篤な副作用が発生しにくい施術であり、医療過誤に対しても十分な対策が取られているため、安心して施術を受けるとよいでしょう。

鍼施術でごくまれに発生する可能性がある重篤な副作用は、下記の2つです。

  • 肝炎
  • 金属アレルギーの悪化

鍼に付着した血液や体液を介して肝炎ウィルスに感染することで、肝炎を発症する恐れがあります。ただし、鍼灸院にはオートクレーブの設置が義務付けられており、鍼灸に使う器具は滅菌・消毒されています。また、現在ほとんどの鍼灸院では使い捨ての鍼が利用されており、肝炎ウィルスに感染するリスクは極めて低いです。

施術に使う鍼はステンレス製のため、金属アレルギーを持つ方はアレルギーを発症したり、アレルギーが悪化したりする恐れがあります。アレルギーを持つ方は、事前に担当した鍼灸師の方に伝え、鍼灸施術が受けられるか確認を取りましょう。鍼灸院によっては、シリコンコーティングをした鍼を利用するといった対策を行ってくれる場合もあります。

また、鍼施術で起こり得る医療過誤の例は、下記の通りです。

  • 鍼の抜き忘れ
  • 折れた鍼の残留
  • 気胸

抜き忘れや鍼の残留は、鍼施術では特に注意してチェックされる医療過誤です。鍼の抜き忘れを防ぐため、鍼灸院ではカウンター機能付きの鍼収納容器やダブルチェックが行われています。また、鍼灸で利用される使い捨ての鍼は、頑丈で折れにくいように工夫がされています。

また、鍼灸施術中に間違って肺に鍼が刺さり、気胸を発症することがごく稀にあります。ただし、現在は気胸対策が周知徹底されているため、過剰に心配する必要はありません。

出典:国立研究開発法人科学技術振興機構J-Stage「鍼灸治療における過誤・副作用の予防と対処について」

3.鍼灸施術を受けるとき・受けた後の注意点

鍼灸施術による効果を高め、好転反応を避けるには、施術前と施術後の注意点を守ることが大切です。

施術前と施術後にそれぞれ気を付けるべきポイントは、以下の通りです。

施術前
  • 体調がすぐれないときは無理をしない
  • 食事は施術の1時間前までに済ませておく
  • できるだけ十分な睡眠を取っておく
施術後
  • 水分をしっかり摂る
  • 2~3時間は安静に過ごす
  • 飲酒、長湯、激しい運動は避ける

施術前と施術後の過ごし方によって、体調に差が出る場合があります。鍼灸施術により好転反応が発生したときには、水分をしっかり摂り、無理をせずに安静に過ごすことで、改善しやすくなります。

安静に過ごしても「症状がよくならない」「悪化している気がする」などと感じたときは、すぐに施術を受けた鍼灸院やかかりつけ医へ連絡しましょう。

まとめ

鍼灸では、鍼灸施術後に一時的にだるさや痛みなどの軽い症状を感じ、その後急速に回復することを好転反応(瞑眩)と呼んでいます。好転反応は鍼灸施術に伴う副作用ですが、激しい症状や慢性的な症状、後遺症の発生などがない点が特徴です。

好転反応は疲労や空腹を感じている方、初めて鍼灸施術を受ける方に起こりやすく、一般的に症状は1日~1週間程度で治まります。鍼施術を受けた後は、無理をせず安静に過ごしましょう。

ただし、好転反応と重篤な副作用を素人が判別することは困難です。症状が悪化したり長引いたりする場合、すぐに施術を受けた鍼灸院やかかりつけ医へ連絡してください。

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