スポーツ鍼灸の効果は?施術内容やスポーツ鍼灸師になる方法を解説
スポーツ鍼灸は、主にスポーツ選手のパフォーマンスを向上させるために行う鍼灸施術を指します。近年ではスポーツ人口も増加しており、スポーツ鍼灸師は将来性のある仕事としても注目されています。
現在、スポーツ鍼灸による施術に興味があるものの、どのような効果が得られるのか分からない方も多いでしょう。
当記事では、スポーツ鍼灸の基礎知識から施術で得られる効果、施術内容に至るまで徹底解説します。スポーツ鍼灸に関する知識を身に付けたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.スポーツ鍼灸とは?
スポーツ鍼灸とは、アスリートを対象に行うはり・きゅう施術のことを言います。ケガの予防や痛みの緩和はもちろん、試合へ向けたコンディション調整などにも効果的です。
スポーツ鍼灸は、施術を通して選手のパフォーマンス向上をサポートする重要な役割を果たします。選手一人ひとりの体調やケガの程度を理解した上で施術をしなければならないため、スポーツ領域に関する幅広い知識が必要です。
1-1.そもそも鍼灸って?
鍼灸は、中国を起源とする伝統的な施術法です。人間が持つ自然治癒力を活性化させることで、ケガの予防や痛みの緩和を目指します。
鍼灸施術は、「はり」と「きゅう」の2種類に分けられます。
はり施術とは、ステンレスや銀でできた直径約0.1mm〜0.3mmほどの非常に細い鍼を身体に刺入して行う施術です。鍼からの刺激で起こる生体反応を利用して、生活機能の変調矯正やケガの予防、痛みケアなどの効果が得られます。
日本では鍼管と呼ばれるストロー状の管に、鍼を挿入して刺入する管鍼法(かんしんほう)が広く用いられているため、刺入時の痛みはほとんど感じません。
皮膚を通過した鍼は、施術の目的に合わせて手技を加えながら適切な深さまで刺入されます。
一方、きゅう施術とは、もぐさを皮膚上で直接燃焼させて行う施術です。熱刺激を通して起こる生体反応を利用して、コンディションケアやケガの予防が可能です。
きゅう施術は、灸の痕を残す「有痕灸」と、灸の痕を残さない「無痕灸」の2種類に分けられます。両者は細かな施術方法の違いによって数種類に分けられ、どの施術も免疫活性への高い効果が証明されています。
そのほか、もぐさや火を使用せずに施術ができる機器もあります。
1-2.スポーツ鍼灸の効果は?
スポーツ選手は、日々のトレーニングの積み重ねにより、体力維持やパフォーマンス向上を実現しています。一方で、毎日身体を動かすことによる疲労の蓄積や、練習中の突発的なケガなどの「スポーツ障害」に悩まされるケースも少なくありません。
疲労の蓄積が原因となって起こる疲労骨折や関節の痛みなどを「慢性スポーツ障害」、運動中に起こる骨折やねんざなどを「急性スポーツ障害」と呼びます。スポーツ鍼灸は、スポーツ障害にも高い効果をもたらすことが可能です。
人間にはもともと自然治癒力や免疫力が備わっており、身体に異常があると体内でさまざまな反応を起こします。例としては、「傷口に菌が入るのを防ぐために白血球を呼び寄せて異物と戦う」「新陳代謝を高めるために血管を拡張させ、新鮮な血液を送り込む」などが挙げられます。
スポーツ鍼灸は、施術の刺激によって自然治癒力や免疫力を促進し、痛みを緩和したり、腫れを抑えたりする効果を高めることが可能です。
また、筋肉や皮膚への刺激は、自律神経の活動にも影響を与えます。鍼灸施術によって自律神経活動を変化させ、血圧の改善やホルモンバランスの調整、免疫活性化などの効果を得ることも可能です。スポーツ鍼灸は疲労回復や筋肉痛の緩和、質のよい睡眠にもつながるため、試合に向けて選手のコンディションを整えられます。
2.スポーツ鍼灸の施術内容
スポーツ鍼灸では、選手一人ひとりの年齢や身体の状態、スポーツ競技ごとの特性、目標などに応じて施術内容を決定します。スポーツ鍼灸は、鍼灸施術の基本となる東洋医学はもちろん、スポーツ医療の観点からアプローチを加えられるのが特徴です。
ここでは、スポーツ鍼灸の具体的な施術法の例を3つ紹介します。
2-1.毫鍼(ごうしん)
毫鍼(ごうしん)とは、ステンレスや銀などでできた非常に細い鍼を指します。一般的に、「鍼灸施術」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、毫鍼を皮膚の表面に刺入するはり施術でしょう。
毫鍼を使用した施術は全身が対象範囲となり、筋肉の痛みや神経痛、肩こりの緩和などが期待できます。
日本での毫鍼施術は鍼管を使用して刺入されることが多く、痛みを感じることはほとんどありません。国内の鍼灸施術には複数の流派があり、刺入方法も流派によって異なるため、事前にホームページなどで施術内容を確認しておきましょう。
2-2.円皮鍼
円皮鍼とは、中央に小さな鍼がついた円形のシールです。シールは直径1cm〜1.5cmほど、鍼は1.5mmほどと短めなのが特徴です。円皮鍼は、施術する場所に直接貼り付けることで鍼を刺入します。
円皮鍼を使用した施術は、肩こりや頭痛、腰痛、関節痛などに効果的です。また、肉離れや捻挫などのケガによる痛みの緩和にも有効です。
円皮鍼は貼り付ける際の痛みを感じにくく、貼ったままにしておくことで施術効果が持続するメリットがあります。痛みがある部分に貼るだけでよいため、シールを購入すれば自宅でも手軽に施術効果を得られます。
2-3.てい鍼
てい鍼とは、先が丸くなった刺さない鍼です。皮膚表面にてい鍼を押圧したり擦り付けたりして使用します。てい鍼は通常の鍼の代わりとして施術に使われるわけではなく、トリガーポイントを刺激して効果を得る独自の施術法です。
てい鍼を使用した施術では、身体の凝りをほぐしたり、女性ホルモンを整えたりする効果が得られます。
てい鍼施術がおすすめなのは、鍼を刺すことに抵抗がある人や、刺す鍼の施術が合わなかった人、小さな子どもなどです。鍼の刺入をしないことは、皮膚の傷や感染の予防にもつながります。また、全身に施術可能である点も魅力の1つです。
3.スポーツ鍼灸の現場で活躍するには?
スポーツ鍼灸の施術には、はり師・きゅう師の国家資格が必要です。「鍼灸師」という資格はないため、はり師・きゅう師それぞれの資格を取得します。
はり師・きゅう師の国家試験を受けるためには、高校卒業後、鍼灸専門学校や鍼灸大学などに3年以上通う必要があります。
また、スポーツ鍼灸師になるには、鍼灸分野の知識・技術に加え、筋肉や身体の仕組みに関する専門性の高い知識が必要です。鍼灸について学べる大学・専門学校の中にはスポーツ科目の授業を履修できる学校もあるため、進学先を選ぶ際は科目をチェックしておきましょう。
国家資格取得後は、一般的な鍼灸院に就職するのはもちろん、スポーツクラブなどの施設と提携している鍼灸院で働くことも可能です。また、プロスポーツチームと個人契約を結び、専属の鍼灸師として選手たちをサポートするのも選択肢の1つです。
また、近年ではスポーツ人口が増加傾向にあることから、スポーツ鍼灸の需要も高まっています。スポーツに関するイベント・大会で鍼灸コーナーが設けられる取り組みも活発化しており、今後はさらにスポーツ鍼灸の有効性・必要性の認知が広がることが予想されます。
スポーツ鍼灸師は、スポーツ界において将来性の高い仕事であると言えるでしょう。
まとめ
スポーツ鍼灸は、スポーツ選手のコンディション調整に欠かせないものと言っても過言ではありません。
スポーツ鍼灸にはさまざまな施術方法があり、施術で得られる効果も異なります。当記事を参考に、ぜひスポーツ鍼灸に関する知識を身に付けてください。
また、スポーツ鍼灸師として活躍したい人は、鍼灸専門学校や鍼灸大学への進学を検討しましょう。進学先を選ぶときは、スポーツ科目があるなどスポーツ障害にまつわる専門知識を詳しく学べるかどうかもあわせて確認することが大切です。
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