合格のために読んでおきたい!鍼灸師試験の概要

体のメンテナンスから、美容や介護の領域まで幅広く活躍できる鍼灸師。今後もますますの需要が見込まれるため、将来性を考えて鍼灸師に興味を持つ人や、特定の分野での活躍を目指して鍼灸師になることを選ぶ人も多いでしょう。鍼灸師の国家試験に合格するためには、学校選びから試験の概要など、さまざまな情報を取得し吟味する必要があります。こちらの記事では、鍼灸師の受験資格や試験科目、試験方法や必要な書類など、試験の概要について詳しく解説していきます。

☆おさえておこう!鍼灸師の試験日程および試験方法

鍼灸師の国家試験は、「はり師国家試験」および「きゅう師国家試験」といいます。これらの試験は、毎年1回、2月の下旬に行われ、1カ月後の3月下旬に合否発表があります。試験は、北海道から沖縄まで各地方で受験することが可能です。試験方法は、客観式四肢択一による筆記試験で、実技試験はありません。午前と午後合わせて4時間(視覚障害のある人は6時間)の試験で、160問が出題されます。はり師またはきゅう師のどちらか一方だけ受験する場合は150問の出題です。視覚障害がある人については、申請により拡大文字や点字などによる受験が認められています。また、文部科学大臣が認定した学校の長や、厚生労働大臣が認定した養成施設の長の承認がある場合に限っては、試験問題の読み上げや録音CDの再生、照明器具や点字タイプライターの持ち込みが可能です。

 

☆自分が受験できるかを確認!鍼灸師の受験資格

厚生労働省の規定によると、鍼灸師の受験資格は「文部科学大臣の認定した学校または厚生労働大臣の認定した養成施設において3年以上、あん摩マッサージ指圧師、はり師またはきゅう師となるのに必要な知識および技能を修得した者」、または「都道府県知事の認定した養成施設において、はり師またはきゅう師となるのに必要な知識および技能を修得した者」とされています。鍼灸師を目指す人が通うべき学校や養成施設は、実務の知識が身につけられる教育課程や実践的な職業教育が編成されていることを、国から認められている必要があるということです。さらに、文部科学大臣により「職業実施専門課程」として認められた授業を実施する専門学校は、全体のわずか24%弱と少数です。そのため、認定基準をクリアした学校では、試験対策はもちろんのこと、本格的な実務も学べます。鍼灸師の受験資格をベースに、学校選びの基準や条件を具体化してみるといいかもしれません。

 

☆全部で13科目!鍼灸師の試験科目

はり師国家試験またはきゅう師国家試験を受験する場合の試験科目は全部で13科目です。はり師およびきゅう師のどちらも受験する場合は14科目になり、各科目については以下の通りです。
・医療概論(医学史を除く)
医療に関する専門職や専門用語、医療制度や一般的な保険制度などについて問われます。範囲の幅が広いですが、一般常識レベルの問題も出題されます。試験の傾向として、160題中1〜3問と出題数は少ないです。
・衛生学・公衆衛生学
衛生学・公衆衛生学は、人間の生存に影響を与えるさまざまな環境に関する学問です。感染症や伝染病について、またその予防のために文明の発展により確立された衛生環境についてなどの知識が必要です。
・関係法規
関係法規は、鍼灸師に関する法律についてです。免許に関する事務や特例、業務の独占や範囲、さらに施術所の名称の制限や広告の制限など、鍼灸師として営業する際に必要な法的知識などを問われます。
・解剖学
解剖学に関する問題では、人間の体の各部位について、その詳細な知識が求められます。名称や機能、各部位の関係性など幅広い知識が必要です。
・生理学
生理学は、名前の通り人間の生理現象についての学問です。血圧や体温などの身近な内容から、神経やホルモンと臓器の関係、体内物質の機能など生物学的な内容が含まれます。
・病理学概論
病理学は、病気になった原因や、病気になったことで体に起こる変化がどのようなものかを研究する学問です。試験では、病気の症状や細胞の役割などを問われます。
・臨床医学総論
臨床医学とは、患者を診察して治療を行うことを指します。体の各部位の診察の仕方、呼吸や脈などが表す徴候の見方、頭痛や発疹、意識障害などの症状を診察する方法などを学ぶ学問です。また、患者の心に寄り添うカウンセリングや療法についての知識も必要です。
・臨床医学各論
臨床医学各論では、系統別疾患の診断および治療に関する知識が問われます。各疾患名とその概要、症状、そして検査方法や治療とその後の経過について学ぶ必要があります。出題数は、160問中20〜23問と比較的大きな割合です。
・リハビリテーション医学
身体障害に関する知識、リハビリテーションに使用する器具や訓練法方、指導方法などについて出題されます。
・東洋医学概論
病気を治療する西洋医学に対して、病気になりにくい体づくりや予防に重点を置いて発展してきた東洋医学。その東洋医学について、歴史や思想、診断の仕方を問われます。
・経絡経穴概論
鍼灸師に欠かせない体のツボ(経穴)とそれを結び連ねる経絡についての知識が必要です。各経穴の名称や位置関係、特徴を問われます。
・東洋医学臨床論
東洋医学の治療原則や治療計画、そして治療法の理解が求められます。臨床医学、経絡経穴についての知識が前提とされ、3年間の学習の集大成を問われる分野だと言えるでしょう。出題数も19〜23問と大きな割合です。
・はり理論またはきゅう理論
はり師国家試験ときゅう師国家試験を併せて受験する場合はどちらも受ける必要があります。各10問で、鍼の療法、灸の療法について問われます。

 

☆確実に用意しよう!受験手続に必要な書類と手数料

鍼灸師試験の受験には、4つの書類と受験手数料が必要になります。まず、東洋療法研修試験財団が配布する「受験願書」です。試験の種類ごとに異なるため、はり師国家試験、きゅう師国家試験のどちらか、またはどちらも間違いのないように記入しましょう。共通科目の試験免除について、また視覚障害のための特別対応については、この願書の所定箇所で言及する必要があります。次に、出願前6カ月以内に撮影した証明写真を貼り付ける、「写真用台紙」です。こちらも財団が配布している書類で、縦6cm、横4cmの写真が必要です。写真は、学校または養成施設の長、あるいは財団の理事長に受験者本人であるとの証明を受けなければなりません。財団で確認を受ける場合は、身分証明書を持参して窓口で証明を受けます。
そして、写真用台紙と切り離さずに提出しなければならない「入力票」があります。こちらは、受験に関するデータの整理に必要なものです。最後に、学校または養成施設の「卒業(修業)証明書」(または見込証明書)を準備しましょう。卒業(修業)見込証明書を提出した場合は、試験後の3月中旬までに卒業(修業)証明書を提出しなければなりません。もし、提出がない場合は、試験が無効になってしまいます。くれぐれも注意しましょう。これらの書類については、試験のある前年の12月に財団へ提出しなければなりません。提出期限を必ず確認し、郵送の場合は書留郵便で送ります。
受験手数料は、1試験につき1万1600円です。はり師ときゅう師のどちらも受ける場合は2万3200円、あん摩マッサージ指圧師も受ける場合は3万4800円となります。手数料は、郵便局または金融機関、ATMからの振込みが可能です。払込受領書、あるいはご利用明細書を願書裏面の貼り付け欄に貼り付けて提出しましょう。2つ以上の受験手数料をまとめて支払った場合は、いずれかの願書に支払った証明書を貼り付け、その他の願書の貼り付け欄にはその旨を記載します。

 

☆試験に必要な持ち物

試験当日は、必ず必要な持ち物について確認し、忘れものがないように気をつけましょう。試験に必要な持ち物は、受験票、筆記用具、そして昼食です。受験票は1月末に郵送されます。もし、2月の中旬になっても受験票が手元に届かない場合は財団へ問い合わせましょう。筆記用具は、普通文字による受験の場合、HBの鉛筆を持ってくるようにと定められています。また、消しゴムは砂消しゴムが不可とされています。視覚障害のある人は特別に、ルーペや単眼鏡、申請した補助具等の持ち込みが可能です。昼食は、試験が午前と午後の部に分かれているため必要となります。

 

☆鍼灸師試験合格を目指そう!

鍼灸師の国家試験を受けるには、受験資格として、国に認定された学校または養成施設で、きちんと知識と技術を身につけることが前提とされています。試験科目も専門的な学問であるため、時間をかけてじっくりと学んでいくことが必要です。経験豊かな先生と質の高い授業。鍼灸師を目指すなら、まずはこれらの条件をクリアできる学校へ入学することが必要です。そして、鍼灸師の国家資格を取得するという、同じ目標を持った仲間たちと切磋琢磨し合いながら、鍼灸師試験合格を目指しましょう。

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