円皮鍼の効果は?使用方法と注意事項についても解説
鍼施術に興味がある人の中には、「円皮鍼」というものを耳にしたことがある人もいるでしょう。円皮鍼は鍼の一種であり、シール状になっている鍼を肌に貼ることで血行の改善・ストレスの緩和などの効果を期待でき、体の調子を整えられます。
当記事では、円皮鍼について効果や使用方法を解説します。鍼を安全に使うには専門的な知識が必要です。当記事で基本的な知識を身につけた上で、実際に使用する際は鍼灸師に指示を仰ぐようにしましょう。
1.円皮鍼とは?
円皮鍼とは、直径1㎝ほどのシールの中央に細く短い鍼がついている、貼るタイプの鍼です。痛みやこりを感じる部分やツボに貼ることで、肩こりや腰痛などの身体の不調を和らげる効果が期待できます。「置き鍼」や「皮内鍼」とも呼ばれ、自宅でできる鍼の施術として人気があります。シールは肌色のものが多いため、つけていても目立ちません。
円皮鍼などの医療機器はリスクの高さに応じてクラスが分かれており、リスクの高いものは鍼灸師や医師など有資格者のみが取り扱える「管理医療機器」に分類されます。自宅でのセルフケアとして使用する場合は、無資格者でも取り扱い可能な「一般医療機器」を使いましょう。
円皮鍼を使って鍼施術を行うと、鍼の刺激によってできた傷を修復するために血流が集中し、血行が改善されることにより痛みの緩和や不快な症状が除去されます。また、円皮鍼は副交感神経の働きをよくする効果があり、ストレスの減少にも役立ちます。肩こりは血行不良のほかにもストレスが原因であることも多いため、双方へのケアが重要です。
1-1.円皮鍼の効果は?
円皮鍼は、血行不良を改善して筋肉の緊張や全身の痛みを和らげるだけでなく、さまざまな不調の改善が期待されています。また、体だけでなく顔にも使用できるため、美容鍼としてもおすすめです。
円皮鍼の効果は科学的にも検証されており、論文の数も増えてきていることから、近年注目が集まっている分野です。東京医療専門学校による実験では、肩こりの自覚がある男女28名が円皮鍼を3日間使用した結果、16名の肩こりの緩和に効果があったという報告があります。
出典:全日本鍼灸学会雑誌52巻5号「肩こりに及ぼす円皮鍼の効果」
円皮鍼のメリットは、鍼が小さいため痛みが少なく、薬のように副作用もないことから、施術への不安が軽減できる点です。鍼が短いことで刺入感が緩和されるため、従来の鍼の施術に恐怖心がある人でも抵抗が少ないでしょう。
貼りながら作業や家事も行えるため、忙しい人の疲労回復方法としてもおすすめです。整体院や鍼灸院に通っても症状の改善がなかなか見られない場合は、自宅でのセルフケアとして円皮鍼を取り入れてみてはいかがでしょうか。
2.円皮鍼の使用方法
円皮鍼の鍼の太さや長さにはさまざまな種類があり、緩和させたい症状や場所など目的に合わせて選ぶ必要があります。円皮鍼はインターネットでも購入ができますが、本来は医師や鍼灸師など医療従事者が使うことを想定して販売されているものです。
鍼は身体に刺す施術のため、誤った知識や使い方では健康被害やトラブルを招きかねません。ここでは円皮鍼の種類や、貼り方の手順について詳しく解説します。
2-1.円皮鍼の種類
円皮鍼の鍼の長さには、実質的に鍼がない0mmから鍼灸師が店舗で使用する1.5mmまで、さまざまな種類があります。症状や目的によって、適切な鍼の長さは変わります。下記で鍼の長さの種類とそれぞれの特徴や、目的別の選び方について紹介します。
0mm | 鍼のないタイプ。顔などのデリケートな部分の使用におすすめ |
---|---|
0.3mm | 痛みは感じにくいが、やや効果の体感が薄い |
0.6mm | 多少の痛みはあるが効果も感じられる。初めての使用におすすめ |
0.9mm | 初心者~痛みを強めに感じたい方向け |
1.2mm~ | 使用時の痛みが強く、鍼に慣れている人向け |
初めて円皮鍼を使用する場合は、0.6mmがおすすめです。0.6mmの円皮鍼は痛みを最小限で抑えながらも、しっかり効果を感じることができる使いやすい長さです。「刺さった感がある方が好みだ」という方は、0.9mmを使用してもよいでしょう。しかし、深く刺せばその分効果が高いというわけではなく、感染リスクも高まるため、素人が自宅で使うことは避けましょう。
2-2.円皮鍼の貼り方
円皮鍼は医療機器であるため、使用方法や手順をしっかりと守る必要があります。衛生面や使用期間などにも注意を払って使用すれば、大きな健康被害は出ないよう設計されています。以下の手順を参考にしてください。
(1)患部を消毒する | コットンにエタノールをとり、貼りたい部分を拭きとる |
---|---|
(2)円皮鍼を用意する | 容器から取り出し、粘着面のシールを片側のみ剥がす |
(3)円皮鍼を患部に置く | 貼りたい患部の上にふわっと置く(鍼は刺さない) |
(4)円皮鍼を刺す | 垂直になるよう軽く刺す |
(5)シールを剥がす | 鍼を押さえながら、残っているシールを剥がす |
(6)完了 | 痺れや痛みなどの違和感がなければ完了 |
貼った後に、チクチクしたり皮膚が引っ張られたりするような違和感があると、鍼が斜めに刺さっている可能性があるため、新しい鍼を刺しなおしましょう。また、消毒は欠かさずに行い、鍼本体を素手で触らないように気を付けてください。円皮鍼は使い捨てタイプのため、使用後は燃えるゴミとして破棄しましょう。
3.円皮鍼を使用する際の注意事項
円皮鍼を自宅でのセルフケアに使用する場合には、いくつか注意すべき点があります。使用期限が切れているものを使用しないのは当然ですが、水に塗れたり交換しないまま長期間貼り続けたりすると衛生面からみてもリスクがあります。
円皮鍼を購入する際は必ず鍼灸師の指示に従い、セルフケアとして使用する場合は、鍼のついていないタイプを使用しましょう。以下で、注意点をそれぞれ詳しく解説します。
3-1.貼りっぱなしにしない
通常の鍼の施術は一定時間で鍼を外しますが、円皮鍼は効き目が優しい分、長時間付けていられる点がメリットです。とは言え、長期間交換せずに使用を続けていると、傷口から感染症にかかるリスクが高まってしまいます。
円皮鍼は入浴前に剥がすことが推奨されています。水に濡れてテープが浮いたところから粘着力が弱まり、剥がれやすくなるだけでなく、タオルで身体を拭く際に肌をこすると鍼で傷付けてしまう可能性があるためです。
3-2.鍼灸師の指示に従う
円皮鍼は通販サイトでも購入できますが、あくまでも施術者が鍼施術で使用する目的で販売されている商品です。個人での使用は自己責任となっているため、注意が必要です。初めて円皮鍼を使用する際は、必ず鍼灸師に相談するようにしましょう。
通常の鍼は、1週間に1度の施術を受けるのが理想的です。しかし、忙しくて通えない方や慢性的な肩こりなどの重い症状がある方は、円皮鍼との併用をおすすめされるケースもあります。鍼の効果を持続的に受けられ、患部の治癒力が高まることが期待されるためです。
円皮鍼を使用する場合は、国家資格のある鍼灸師に貼ってもらうようにしましょう。どうしても定期的に鍼灸院に行くことが難しい方でセルフケアとして取り入れる場合は、鍼灸師のアドバイスを聞いた上で、鍼がついていないタイプを使用してください。
まとめ
円皮鍼とは貼って使用するタイプの鍼であり、痛みやこりを感じる部分に貼ることで体の不調を和らげる効果を期待できます。鍼の長さにはさまざまな種類があるため、どの程度鍼に慣れているかで選ぶのがおすすめです。
円皮鍼はセルフケアに使用することもできますが、使用する際は鍼灸師の指示に従うようにしましょう。医療機器の一種のため、使用方法や衛生面には十分に気をつけ、専門的な知識を身につけた上で使用することが大切です。
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