鍼灸施術で起こる好転反応の期間は長い?代表的な症状も解説
鍼灸院での施術を受けた経験がある方の中には、施術後に倦怠感をはじめとした身体の不調を感じたことのある方もいるのではないでしょうか。
鍼灸施術後に起こり得る身体の不調は「好転反応」と言い、東洋医学では「瞑眩(めんげん)」と呼ばれています。
当記事では、鍼灸施術における好転反応(瞑眩)の概要から、好転反応の発生期間と主な症状、さらに期間が長引く場合の対処法まで詳しく説明します。鍼灸施術での好転反応に悩んでいる方やこれから鍼灸施術を受けようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
1. そもそも鍼灸における好転反応(瞑眩)とは
鍼灸院での施術を受けた後は、東洋医学において「瞑眩」と呼ばれる「好転反応」が生じる可能性があります。
好転反応(瞑眩)とは、施術を受けた後、身体が回復に向かう途中で起こる一時的な身体症状のことです。鍼灸院での施術だけでなく、整骨院・整体院での施術を受けた翌日などにも発生しやすくなっています。
好転反応は副作用の一種ではあるものの、施術を受けたすべての方が起こる症状ではありません。一般的にイメージされる副作用よりも一過性で反応期間が短く、めったに起こらないと言っても過言ではないでしょう。
また、好転反応と似たものに「もみ返し」があります。もみ返しとは、必要以上に強い力で整体施術やもみほぐしを受けた後に起こる症状であり、施術部位周辺がピンポイントで痛んだり、部分的な痛みが数日以上続いたりするのが特徴です。好転反応と非常に似ているものの、もみ返しは好転反応と違って比較的「悪い症状」に分類されることも覚えておきましょう。
1-1. 【要注意】好転反応は危険な言葉でもある
好転反応は、身体が改善・回復する過程において発生する反応の1つであることから、「発生したほうがよいのではないか」と考える方もいるでしょう。
しかし、好転反応は標準医療では用いられない言葉であり、発生したからと言って必ずしも身体の状態がよくなっていくとは限りません。
そもそも東洋医学における瞑眩は、「発生する可能性があるものの、重大な後遺症にならないような弱い副作用」を意味します。あくまでも単なる副作用の一種であり、体がよい状態に変化していくことを示唆する回復反応ではない点に注意が必要です。
悪質な施術者の場合、好転反応の範囲に収まらない悪化症状が出ているにもかかわらず、利用を継続させるために好転反応を謳うケースが少なからずある点も覚えておきましょう。
2. 鍼灸施術で好転反応が発生する期間と症状
鍼灸施術によって好転反応(軽い副作用)が発生する期間は、通常2~3日程度です。施術後の翌日にピークを迎えるケースが特に多いものの、その後基本的に徐々に症状が和らいでいき、長期的に起こることはほとんどありません。
しかし、体調次第では2~3日よりも期間が長引いたり短くなったりする点も覚えておきましょう。さらに、体質によっても好転反応の起こりやすさは多少変わります。
また、鍼灸施術では下記のような症状が好転反応として起こりやすくなっています。
【鍼灸で起こりうる好転反応の症状】
- 疲労感
- 眠気
- 不眠
- 愁訴の悪化
- かゆみ
- 発熱
- めまいやふらつき
- 吐き気や気分不良
- 頭痛
- 胸痛
出典:東京大学学位論文データベース「鍼治療の安全性情報確立のための臨床研究 : 有害事象の前向き調査」
ここからは、特に代表的な好転反応の症状について詳しく紹介します。
2-1. 頭痛がする
鍼灸施術における代表的な好転反応の症状の1つが、頭痛の発生または悪化です。
はっきりとした原因は、頭痛をはじめとしたその他の好転反応でも解明されていません。しかし、頭痛においては施術中に身体がリラックス状態となったことによって、血中にセロトニン物質が大量に放出され一時的に頭痛が発生するという説が有力です。
症状の発生期間は早くて1日、長引けば数日続くケースもあります。頭痛がしている間はなるべく運動・飲酒を避け、水分をとりつつ安静にしておくのがおすすめです。
2-2. だるさやめまいを感じる
施術後に起こる身体のだるさやめまいも、好転反応の代表的な症状と言えます。ひどい場合はふらつきや吐き気を感じる方もいるでしょう。
倦怠感をはじめとしたこれらの症状は、血流の活発化や筋肉の収縮・拡張が主な原因とされています。基本的には2~3日で徐々に和らいでいくものの、体調次第では1週間ほど長引く可能性もゼロではありません。
もともと身体が疲労状態にある方や普段からだるさやめまいを感じやすい方は、特にこうした好転反応が起こりやすいため気を付けておきましょう。栄養バランスのとれた食事を心がけ、なるべく横になって安静にすることが大切です。
2-3. 眠れない
鍼灸施術を受けた方の中には、当日の夜に眠れなくなるという方もいます。これも1つの好転反応であり、自律神経が整う過程で発生する症状とも言われています。
また、鍼灸施術による刺激に対する過剰反応が原因の可能性もゼロではありません。鍼灸施術を受けるたびに眠れなくなる場合は、鍼灸師に相談して刺激量を減少してもらうとよいでしょう。
眠れないという好転反応が長引くケースはほとんどなく、2~3日で改善することが一般的です。施術当日に眠れなくなった場合でも、とにかく横になって目を閉じましょう。
また、寝る前にスマホを長時間触ったりお酒を飲んだりするのは、今後の安眠も妨げる可能性があるためなるべく避けてください。
2-4. 施術前より痛みが増す
鍼灸施術後の好転反応として、施術前より痛みが増したり、筋肉痛のような痛みが生じたりするケースも少なくありません。
考えられる原因はさまざまで、施術の刺激に対する過剰反応・麻痺していた神経の回復による一時的な神経過敏などが挙げられます。いずれにしても、痛みは2~3日で治まる傾向です。
しかし、もともと身体が疲労状態にある場合や、痛みを我慢して負荷のかかる行動を続けた場合は長引きやすい点も覚えておきましょう。なるべく早い段階で痛みを和らげたいのであれば、過度な運動や飲酒、長時間の入浴は避け、安静にしておくことが大切です。
3. 好転反応の期間が長い場合の対処法
好転反応を感じる期間は、人によって大きく異なります。1日で症状を感じなくなるケースもあれば、1週間ほど続くケースもあるでしょう。
できるだけ好転反応を起こさないためには、鍼灸院での施術直後は2~3時間安静にして、普段よりも多めに水分補給をすることがおすすめです。
万が一好転反応が起きた場合は、負荷のかかる激しい運動や飲酒、長湯を避け、できるだけ横になって安静にしておきましょう。また、頭痛が起きた場合は後頭部を冷やす・筋肉痛のような痛みが生じた場合は湿布や鎮痛消炎薬を使うなど、症状に合わせて対処することも大切です。
なお、2~3日が経過しても強い症状が続く・悪化する場合は、すぐにかかりつけ医に相談するか病院で医師の診察を受けましょう。
3-1. 症状がひどい場合はすぐに病院へ行く
たとえ好転反応が起きてから2~3日が経っていなくても、次のようなひどい症状が発生している場合はすぐに病院で医師の診察を受ける必要があります。
- 咳が止まらない、息苦しい
- かゆみや蕁麻疹が全身に出る
咳が止まらない・息苦しいという場合は鍼が肺や胸膜に穴を開けた「気胸」の可能性が、全身のかゆみや蕁麻疹は金属アレルギーやもぐさアレルギーが原因となっている可能性があります。
上記のようなケースは非常にまれであり、たとえ発咳・発疹があっても単なる好転反応である場合も珍しくありません。しかし、「好転反応だろう」と症状を放置しておくのは非常に危険です。少しでも不安に思った際は、なるべくすぐに医師の診察を受けましょう。
まとめ
好転反応(瞑眩)とは、施術を受けた後、身体が回復に向かう途中で起こる一時的な身体症状です。副作用の一種ではありますが、鍼灸施術を受けたすべての方に起こる症状ではありません。
鍼灸施術における代表的な好転反応の症状としては、頭痛や倦怠感、めまい、不眠、身体の痛みなどさまざま挙げられます。
なるべく好転反応を起こさないためには、施術直後の2~3時間は安静にし、しっかりと水分を補給することが大切です。また、好転反応が起きた場合は激しい運動や飲酒、長湯を避け、なるべく横になって安静にしておきましょう。
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