鍼灸院を開業するには?開業の流れと費用・ポイントを解説

鍼灸院を開業するには?開業の流れと費用・ポイントを解説

鍼灸師として働いている方、もしくは鍼灸師の仕事に興味がある方の中には、将来自分の鍼灸院を持ちたいと考えている方もいるでしょう。鍼灸師は開業権が認められており、資格を持っていれば鍼灸院を開くことができます。しかし、鍼灸院を開業するにはさまざまな準備や資金が必要です。

当記事では、鍼灸院を開業する際の流れと必要な費用・準備について解説します。鍼灸院の開業を目指している方は、ぜひ理想の鍼灸院を開くための参考にしてください。

1.鍼灸院を開業するときの流れ

鍼灸院を開業するにはさまざまな準備が必要です。準備の中には資格の取得や開業資金の用意など、かなりの時間がかかるものも多数あるため、あらかじめ独立開業する際の流れを把握し、計画的に準備を行う必要があります。

ここでは鍼灸院を開業する流れを解説します。

1-1.資格を取得する

鍼灸院開業には、鍼灸師の資格が必要です。鍼灸師の資格は「はり師」「きゅう師」の資格に分かれており、どちらも国家資格です。

国家試験を受けるには高校を卒業し、大学や専門学校などのはり師・きゅう師の養成機関に3年以上通い、知識と技術を身につける必要があります。カリキュラムの終了し受験資格を得た後、国家試験に合格することで晴れて鍼灸師となります。鍼灸師には開業権が認められており、国家資格を得ることで開業が可能です。

まだ鍼灸師の資格を取得していない方は、取得までに最低3年はかかるため注意しましょう。

出典:公益社団法人 日本鍼灸師会「鍼灸の基礎知識」

1-2.開業準備をする

自分の鍼灸院をうまく経営するには、お客さんに信頼してもらうことが不可欠です。お客さんとの信頼関係を築くには、確かな技術と幅広い知識が必要になるため、資格を取得した後数年は修業期間を設けたほうがよいでしょう。他の鍼灸院で働き、鍼灸師業務を行いながら、経験だけでなくお客さんのニーズをうまく引き出す接客術も磨きます。

また、同時に開業資金についても考えていく必要があります。すべての費用を自己資金で用意する必要はなく、場合によっては融資を受けることもできますが、融資には条件がある場合もあります。資金計画を練り、ある程度の自己資金は用意しておきましょう。

1-3.各種届け出を行う

実際に鍼灸院を開業する際は、さまざまな届け出が必要です。店舗を設ける場合は「施術所開設届」を、訪問施術専門の鍼灸院である場合は「出張業務開始届」をそれぞれ保健所に提出しなければなりません。

どちらの形式であっても、開業後は税務署へ「開業届」を提出します。また、開業届と同時に確定申告の際に必要な「青色申告承認申請」を行っておきましょう。青色申告は複雑ですが、節税につながるという大きなメリットがあります。

2.鍼灸院を開業するのに必要な費用は?

開業費用は、店舗を持つのか訪問施術専門の治療院にするのかによっても大きく異なります。

鍼灸院の店舗を新規開業する場合、おおむね300万~500万円程度の費用がかかるのが相場だといわれています。物件を借りる必要があるため、敷金や仲介手数料といった不動産の取得に必要な費用がかかる上、施術室や待合室の内装費なども必要です。初期費用のほかにも、店舗を構えることで家賃や光熱費といった、毎月のランニングコストも発生します。事業計画をしっかりと立てた上で、物件や備品などを準備するための費用とは別に、当座の運転資金を多めに確保しておく必要があります。

一方、同じ開業であっても往診専門の場合、すでに車を持っていればはるかに少ない資金で開業できる場合があります。物件を用意しなくてよいため、不動産取得費などを節約できる上、施術道具やタオルなどの最低限の治療用品や備品を用意するだけでスムーズに開業できます。資金をあまりかけずに開業したかったり、鍼灸院に通うのが難しい人のサポートがしたいと考えていたりする場合は、出張専門を視野に入れるのも1つの手です。

鍼灸院を開業するのに必要な費用を下記にまとめましたので、参考にしてください。

不動産取得費 事務所や店舗を取得するためにかかる費用。家賃や賃貸手数料なども含まれる。往診専門の鍼灸院では不要。
備品代 タオルやイスといった、施術に必要となる備品を用意するための費用。
宣伝費用 チラシ代やwebサイト運営費など。webサイトを開設した際は、保守や管理などに継続的な費用がかかる。
設備投資費 内装工事費や施術に必要な用品や施術機器などにかかる費用。
当座の生活費 鍼灸院の運営が軌道に乗り、継続的な売上が確保できるようになるまでの生活費。

3.鍼灸院を開業する際のポイントは?

せっかく開業するのならば、多くの人に愛される素敵な場所を作りたいと思う方も多いでしょう。しかし、鍼灸院を開業したからといって、必ず成功するわけではありません。経営者として安定した経営を行い、鍼灸院を繁盛させるには、いくつか注意しなければならないポイントがあります。ここでは、鍼灸院を開業する際の注意点について解説します。

3-1.法令を遵守する

開業したら、さまざまなトラブルを回避するための工夫が欠かせません。その基礎となるのが、法律の遵守です。開業のとき、そして開業後は、思いもよらないトラブルが発生する可能性があります。トラブルが起きた際、法律を知らなかったという言い訳は通用しません。開業するなら、鍼灸にかかわる法律を熟知していることは大前提です。

開業に関する規定や手続きについては、あらかじめしっかりと勉強しておきましょう。同時に、開業後経営を続けていくと発生する所得税の申告や保険診療の扱い方についても熟知しておく必要があります。

さらには、広告表現の規制についても知っておかなければなりません。鍼灸院の広告表現は「あはき法」によって制限されているため、広告に記載できる内容とできない内容が明確に決まっています。広告表現は、特に開業後にトラブルになりやすいポイントなので、分からない部分はプロに相談するなどして、知らないうちに法律に反してしまわないよう備えておきましょう。

3-2.治療院のコンセプトを明確にする

開業の第1歩は、治療院のコンセプトを固めることです。開業を決めたときにイメージしていた「将来自分が経営していく治療院」を形にするために、何が必要なのかを考えます。

特に重要なのが、ターゲット層はどのような人なのか、患者さんのどのようなニーズを満たせる治療院にするのかを決めることです。ターゲット層や満たしたいニーズによって、治療院の開業場所や金額設定、提供する施術内容が変わります。

たとえば会社員をターゲットにするのであればビジネス街の駅前に、主婦をターゲットにするなら住宅街に治療院をオープンする必要があります。一般層をターゲットとし、リーズナブルな値段で基本的なニーズを満たすための治療院なら、老若男女問わず集客を見込めます。一方、セレブ層をターゲットとしてプラスアルファのニーズを満たす治療院にするなら、施術者の技術と店の雰囲気作りが必要ですが、施術価格も高く設定できます。

ターゲット・コンセプトを最初に決めることで、立地や店内の雰囲気・金額設定などがおのずと掴めます。開業を考える際は、まず初めに治療院のコンセプトを明確にすることから始めましょう。

まとめ

鍼灸院を開業するためには、鍼灸師の資格を取得した上で、施術技術の向上を目指して修行を重ねたり、開業資金を用意したりしていく必要があります。開業資金は治療院の形態によっても異なります。自分がどのような鍼灸院を持ちたいのか考え、鍼灸院のコンセプトを明確にして開業準備を進めるとよいでしょう。

開業の際にはさまざまな書類を届け出る必要がある上、鍼灸院を経営していると保険請求やあはき法による広告規制など、法律の知識も不可欠です。トラブルを回避するためにも、開業準備と並行しながら法律に関する知識も身につけておきましょう。

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