鍼灸師資格は働きながら取得できる?必要な学費や最短の年数を解説

鍼灸師資格は働きながら取得できる?必要な学費や最短の年数を解説

鍼灸師とは、東洋医学の思想に基づいてツボに刺激を与える伝統的治療法により、体の調子を整える職業です。飛鳥時代に日本に伝来した鍼灸は、現在は医療系の国家資格であり、美容やスポーツなど幅広い分野で親しまれています。鍼灸師は社会人から目指す人も多く、働きながら取得を目指すことも可能な資格の1つです。

この記事では鍼灸師資格を社会人が働きながら取得する方法や、最短で取得するまでの年数、必要な学費について解説します。

1.社会人が働きながら鍼灸師資格を取得する方法

鍼灸師資格とは、はり師・きゅう師国家資格の総称です。はり師・きゅう師国家資格はそれぞれ別の資格であるものの、多くの場合同時に取得されるため、「鍼灸師資格」と総称されます。

鍼灸師資格を取得するには、鍼灸師養成施設で3年以上学んだ上で、はり師・きゅう師国家試験を受験して、合格することが必要です。

出典:厚生労働省「はり師国家試験の施行」

出典:厚生労働省「きゅう師国家試験の施行」

社会人が働きながら鍼灸師資格を取得するには、夜間コースのある養成施設で学び、国家試験の受験資格を満たす方法があります。夜間コースのある養成施設では平日の夕方以降に実施される授業を通じて、所定のカリキュラムを履修できます。

1-1.通信教育では鍼灸師資格は取得できない

鍼灸師資格は医療系国家資格であり、施術に要する専門性の高い技術や知識を通信教育で習得することは難しいため、養成施設への通学が不可欠です。通信教育では鍼灸師資格を取得できません。

養成施設では講義を通じてリハビリテーション医学・解剖学・東洋医学臨床論など、広範な分野の知識を習得できます。また、養成施設では実習を通じて臨床現場の仕事を体験し、国家試験の合格後に即戦力として活躍できるスキルの習得が可能です。

1-2.社会人が最短で鍼灸師資格を取得するには3年かかる

社会人が鍼灸師資格を取得するためには3年以上養成施設で学習し、卒業後にはり師・きゅう師国家試験を受験して合格することが必要です。つまり、社会人が鍼灸師資格を取得するためには最短でも3年はかかります。

はり師・きゅう師国家試験はいずれも、1問1点の170点満点で出題される試験です。6割以上正答できれば、国家資格を取得できます。

出典:厚生労働省「第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」

以下は、過去のはり師・きゅう師国家試験の平均合格率です。

はり師国家試験 76.9%
きゅう師国家試験 77.6%

出典:東洋療法研修試験財団「過去の受験者数」

はり師・きゅう師国家試験の平均合格率は70%を超えており、問題も四肢択一方式で出題されることから、難易度が非常に高いとは言えません。しかし、一発で合格を狙うためには、十分な学習と事前準備が必要です。養成施設で使用する参考書・教科書や過去問題集を有効に活用し、余裕を持ったスケジュールで事前準備を進めましょう。

2.鍼灸師養成施設の夜間コースとは

養成施設の夜間コースとは夕方から夜の時間帯を活用して講義に参加し、卒業を目指すコースです。夜間コースでは18〜21時程度の時間帯で授業を行うことが多く、昼間に働いている人も無理なく講義に参加し、卒業を目指せます。

2-1.夜間コースに必要な学費

夜間コースの入学から卒業までにかかる費用は養成施設によって異なるものの、3年制の専門学校を選択した場合、3年間で450万円程度が必要です。夜間コースの初年度には別途、入学金の支払いも発生します。

以下は、養成施設の種類別・学費の目安です。

【はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師養成施設に必要な費用】

施設の種類 平均入学金 入学金以外の平均年間費用
私立大学 245,951円 1,111,129円
専門学校(昼間) 351,000円 1,384,000円
専門学校(夜間) 421,000円 1,386,000円

出典:文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」

出典:東京都専修学校各種学校業界「令和4年度専修学校各種学校調査統計資料」

私立大学は専門学校と比較して平均入学金や平均年間費用が安いものの、4年間通わなければならない点に注意しましょう。私立大学では通う期間が長い分、卒業までにかかる学費の総額がかさむ可能性は高いと言えます。

専門学校の昼間と夜間では上記の通り、同程度の学費がかかる可能性は高いでしょう。ただし、一部の養成施設では夜間コースの学生のみを対象とする奨学金や学費免除制度で、働きながら資格取得を目指す人を応援しています。養成施設のサポート制度を有効に活用すれば、夜間コースにおける学費の負担の軽減も可能です。

2-2.夜間コースに通うメリット

鍼灸師の夜間コースに通う代表的なメリットは、以下2点です。

多様な年齢や経歴の人と一緒に学習できる

夜間コースに入学する人の年齢や経歴はさまざまで、社会人経験者も多くいます。現在社会人として働きながら鍼灸師の勉強をしている方でもなじみやすい点がメリットです。

また、将来的に鍼灸師になったときには、幅広い年齢の方の施術を担当します。学生時代から多様な年齢や経歴の人と交流を持っていれば、その際にも円滑なコミュニケーションにつながるでしょう。

生活費などを稼ぎつつ、国家資格を取得できる
夜間コースは日中の仕事を辞めずに通い、国家資格の取得を目指せる環境です。日中の給料で在学中の生活費や学費をまかなえば、経済的負担も軽減できます。

夜間コースでは多くの場合、昼間のコースと同様の就職支援や開業サポートを受けられます。夜間コースで効率的に鍼灸師として働くために必要なスキルを習得すれば、スムーズにキャリアチェンジできます。

3.社会人が働きながら鍼灸師資格を取得するために心がけること

働きながら鍼灸師資格の取得を目指す際には「通常の学生と比較し、大変」と感じることもあるでしょう。以下では、社会人が国家試験の合格を目指す際の心構えや途中で挫折しないためのポイントを解説します。

3-1.仕事と両立できる学校を選ぶ

夜間コースのある養成施設の中にも、社会人に配慮したカリキュラムが組まれていない施設はあります。無理なく資格取得を目指すためには学校見学で得られる情報・公式サイト記載のカリキュラムを参考にして、仕事と両立しやすい入学先を選択しましょう。

条件を満たす養成施設が複数ある場合は、立地を重視して入学先を選択するのがおすすめです。自宅や職場からアクセスしやすい施設を選択すれば、通学の負担を軽減できます。

3-2.自分が学ぶ目的を念頭に置いて自己管理する

仕事と勉強を両立すると自由に過ごせる時間が減少し、体力面の負担を感じる可能性があります。途中で挫折しないためにも、資格取得を目指す理由や理想とする鍼灸師像を明確化し、常に意識することでモチベーションを維持しましょう。

たとえば、スポーツトレーナーとしてのスキルアップ目的で資格の取得を目指す人は、資格を取得して選手に貢献する自分自身の姿を想像すると、モチベーションを維持できます。介護福祉業界で働いている人は、資格取得後に鍼や灸を利用してより広範なケアを担当できる人材になることを想像するとモチベーションが高まるでしょう。

3-3.職場や家族の理解を得る

働きながら資格の取得を目指すためには、職場や家族の協力が欠かせません。周囲の人には以下のことを説明し、理解を得ると安心です。

  • 通学期間、目的
  • 配慮してほしい事柄
  • 家族もしくは勤務先にとってのメリット

残業が頻繁に発生すると、養成施設に入学しても講義に参加できません。鍼灸師資格を取得する目的やメリットを事前に上司へ説明し、配慮してもらえる環境を構築しましょう。

パートナーや子どもがいる人は予想されるライフスタイルの変化を事前に伝えて、家事分担を見直してもらいましょう。「独立して鍼灸院を開業すると、年収アップが見込める」など家族にとってのメリットを伝えつつ協力をあおぐことが、スムーズに説得するコツです。

まとめ

鍼灸師資格は働きながら取得を目指せる国家資格です。ただし、通信教育では資格取得ができず、最短で鍼灸師資格を取得するには3年以上鍼灸師養成施設に通う必要があります。働きながら鍼灸師を目指すのであれば、夜間コースを用意している鍼灸師養成施設に通いましょう。

ただし、3年制の専門学校の場合は3年間で平均450万円程度の学費がかかります。一部の養成施設では夜間コースの学生のみを対象とする奨学金や学費免除制度があるため、入学前に制度を調べておくのがおすすめです。また、入学前に職場や家族の理解を得て、仕事と両立できる学校を探すとよいでしょう。入学後はなりたい自分の姿をイメージして勉強を続けることで、モチベーションを維持しやすくなります。

※当記事は2023年8月時点の情報をもとに作成しています

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