教えて!鍼灸師の学校で学べる分野や取得可能な資格

治療はもちろん、健康増進のためにも利用する人が多い鍼灸。鍼灸はお年寄りやスポーツ選手が受けるもの、というイメージがありがちですが、実はそれだけではありません。鍼灸師は活躍できる場が幅広く、魅力的な職業なのです。とはいえ、まだまだ知られていないのが鍼灸であり、鍼灸師になるためのプロセスでしょう。ここでは、鍼灸師になるためにはどうしたらよいか、また、学べる分野や取得可能な資格、卒業後の進路について説明します。

 

☆需要は拡大傾向!鍼灸を学ぼう

鍼灸師について説明する前に、鍼灸とはどういうものかをご紹介しましょう。鍼灸は身体のツボなどに鍼を指し、あるいは灸をすえ、自然治癒力を高め、病気の治療や予防を行うものです。鍼灸の歴史は古く、鍼やモグサを患部に用いるという治療法は、約二千年前の中国戦国時代の文献に認めることができます。また、身体を流れる気のルートに関する記述も、紀元前2世紀頃の文献に確認されています。その後鍼灸の知識は中国から朝鮮へ伝わり、日本に伝来されたのは6世紀頃といわれています。平安時代には、医学としての鍼灸の知識と技術が確立されました。伝来初めは貴族や戦国時代の武将などが治療目的で鍼灸を利用していたのが、時代が下がるにつれ、民衆にも広く親しまれるようになります。
日本独自の方法も編み出され、目の不自由な人の教育にも大いに利用されてきたのが鍼灸なのです。明治以降、西洋の医学知識に押された時期もありましたが、幅広く親しまれた歴史の中で存続されてきました。また、70年代にはWHOが鍼灸治療の適応疾患を発表するなど、鍼灸に対する医学的認識が深まり、近年鍼灸の需要は拡大しています。なお、鍼灸師は国家資格をもった医療技術者です。鍼灸師になるには、年に一回行われるはり師・きゅう師の国家試験に合格する必要があります。

 

☆可能性広がる!学べる分野は幅広い

はり師・きゅう師の国家試験を受けるにはどうすればよいでしょうか。まずは、はり師・きゅう師の養成過程のある期間・学校などで受験資格を取得する必要があります。鍼灸師は東洋医学の専門家であり、医療技術者であるため、鍼灸師になるには専門学校などで鍼灸や医療に関する十分な知識と経験を学ぶことが重要なのです。鍼灸師を養成する専門学校は、学校により学べる範囲の違いはありますが、基本的に学ぶ分野が幅広いのが特徴です。鍼灸といっても、古くから伝わる中国鍼灸・日本鍼灸だけではなく、スポーツや高齢者、女性に特化した美容やレディース向けの鍼灸を学べる学校もあり、同じ鍼灸の技法でもさまざまな層に特化してアプローチすることができます。
卒業後はさまざまな分野での活躍が期待できます。たとえば野球などのスポーツ選手に向けたスポーツ分野、美顔やダイエットなどの体質改善などにアプローチする美容分野、機能低下による障害を抱える高齢者に対する福祉分野や医療分野などへの進出が考えられます。そういう意味では、学んだ鍼灸の知識を、どういう方面で生かしたいのかという将来像が描きやすいでしょう。さらに独立開業が可能という点も見逃せません。活躍の幅が広がるのが鍼灸師の醍醐味でもあります。

 

☆知っておこう!基本的な学びのステップ

鍼灸師を養成する専門学校では、深い専門知識の学習と国家試験対策のため3年制をとるものが多くあります。基本的には、以下のような学びの段階を設けています。まず1年次では、基礎医学や実技を学習します。基礎医学には東洋医学、経穴といわれるツボを学ぶ経絡経穴はもちろん、生理学や心理学、解剖学など、人体の構造、身体と心の関係など医学的知識をじっくり学習していきます。こうした座学のほか、実技室で経路経穴で学んだ経穴(ツボ)を中心に、基礎的実技の演習も行います。2年次には、1年次で学んだ医学的知識や鍼灸知識に基づいた、実践実技が中心となっていきます。
2年次の特徴は、知識の応用座学、美容実技などの臨床実技が多くなることです。たとえば漢方、東洋医学や臨床医学の各論・総論などを学びます。中国鍼灸を学習する学校では、2年時で中医学や中国鍼などを学ぶことになります。応用である美容や高齢者、スポーツ鍼灸のゼミも2年次に行われます。最終学年である3年次では、臨床実習のほか国家試験対策に重点が置かれます。座学では総合医学や介護福祉など、卒業後の活躍の場を意識した講座が組まれます。実技では2年次で行ったゼミを受け、高齢者・レディース・スポーツなど専門的な鍼灸実技を学ぶことができます。国家試験対策にも力が入り、いよいよ資格取得に向かうのが3年次です。ただし、学ぶ講座や実技の内容は、学校により違いがあります。

 

☆手に職!取得可能な資格

鍼灸師の養成課程のある専門学校では、鍼灸師の資格だけではなく、ほかの資格の取得を目指すことが可能です。国家資格であるはり師・きゅう師はもちろん、学校によっては医療専門士、柔道整復師、そしてあん摩マッサージ指圧師の取得が可能な場合があります。たとえば一定の要件を満たした医療専門学校の修了者に対して、文部科学大臣より「専門士」の称号が付与されます。この場合は、文部科学大臣が指定した課程の修了者であるという条件があります。また、柔道整復師の学科を設けている学校の場合、柔道整復師の資格を取得することが可能です。
柔道整復師は、骨折や打撲、ねんざなどのケガに対し、整復・固定という手術をしない治療を行うことができる国家資格です。柔道整復師の資格を得ると、接骨院の開業や病院スタッフ、スポーツトレーナーなどの道が開かれます。あん摩マッサージ指圧師は国家資格であり、唯一営業時にマッサージという言葉を使用できます。鍼灸同様、医療分野だけではなく、美容やスポーツなど様々な分野での活躍が期待できる資格で、鍼灸師の資格と同時に、あん摩マッサージ指圧師の資格を取得する人も少なくありません。これらの資格は、学校がそれぞれの養成学科を併設しているかどうかや、自分の専攻分野によって取得できるものに差がでる場合があります。

 

☆卒業後の道は?主な進路

鍼灸師の国家試験も無事パスし、専門学校を卒業した後の主な進路についてはどんなものがあるでしょうか。鍼灸師養成課程では鍼灸に関する幅広い知識と技術をみっちり身に付けるため、資格取得後には鍼灸院の独立開業も夢ではありません。独立開業するには、事務的な手続きのほかどこに開業するべきかというマーケティングも必要ですし、開業資金も必要です。独立するまでにはクリアするべきことがたくさんありますが、夢を実現できるという希望と楽しみがあるというものです。独立開業をしなくても、総合病院などの医療機関での活躍の場が期待できます。鍼灸治療を行っている総合病院や大学病院で専門家・技術者として働いたり、鍼灸治療院でスタッフとして勤務する道もあります。
さらには、スポーツ現場での鍼灸治療に特化したチームやメディカルグループに所属し、スポーツトレーナーとして活躍することも可能です。また、介護の現場でも鍼灸技術は大きく貢献することができます。高齢者は加齢による関節の痛みや循環器系疾患など多くの悩みを抱えています。医療的な処置を行っている介護・福祉施設に就職することによって、高齢者の健康に寄与することができます。さらには、エステなどの美容業界でも鍼灸技術を大いに活用することができるため、卒業後は自分の希望により幅広い活躍の場が見込めます。

 

☆鍼灸師の資格取得で大きく活躍!専門学校で幅広く学ぼう

鍼灸師になるためには、鍼灸師養成課程を持つ専門学校などで一定の知識と技術を学び、国家試験に合格する必要があります。3年次という、ほかの専門学校と比べると長い期間でみっちりと鍼灸に関する知識を学びます。専門学校では鍼灸知識や技術のほか、東洋医学や生理学、心理学や解剖学などの医学知識を学ぶため、学校によっては修了後、医療専門士の称号を得ることも可能です。学ぶ範囲も広く、加えて正確な経穴知識、臨床技術も必要なため、卒業までには多くの努力が必要となるでしょう。しかし、国家資格であるはり師・きゅう資格を取得することにより、専門学校卒業後は、幅広い分野での活躍が期待できることは見逃すことができません。
また、国家資格を取得しているということは、仮に就職し定年したあとでも、長く働くことが可能であることを意味しています。超高齢化社会の中で、ますます健康への関心が高まっています。また、高齢化により高齢者の健康維持のための治療なども増えることでしょう。幅広い医学知識を有した鍼灸師の専門家としてのニーズは、今後さらに高まっていく可能性があります。また、そのような鍼灸師以外にも、専門学校では取得できる資格も多くあります。健康に悩む人に貢献する医療の専門家として、広い知識を学べる鍼灸師の学校に通うことを検討してみてはいかがでしょうか。

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