鍼灸師の年収はどのくらい?1,000万円を目指せる方法はある?

鍼灸師の収入は、資格やスキル、働く環境によって大きく異なります。収入を増やすには、キャリアパスを見極め、成長につながる選択が欠かせません。関連資格の取得や、需要の高い専門分野への特化も効果的です。また、独立開業や条件の良い鍼灸院への転職も収入アップの選択肢になります。
当記事では、鍼灸師の年収向上に役立つ具体的な方法を解説し、それぞれのメリットを紹介します。自分にとっての最適な方法を見つけ、キャリアアップに役立ててください。
1. 鍼灸師の平均年収はどのくらい?

厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、鍼灸師の全国平均年収は、2023年(令和5年)度で459.3万円とされています。この額は、日本人全体の平均年収とほぼ同水準です。国税庁の2023年民間給与実態統計調査によれば、日本人の平均年収は約460万円で、鍼灸師の年収との差はわずか7,000円しかありません。このデータから、鍼灸師の年収は日本の平均的な水準に位置することが分かります。
ただし、鍼灸師の年収は働く地域や雇用形態、経験年数などによって異なります。都市部での開業やスキルの向上によって年収アップが見込まれる一方、勤務先や個人経営の安定度も収入に影響するポイントです。
1-1. 年齢別にみた鍼灸師の平均年収
鍼灸師の年収は、年齢と経験に応じて着実に上昇する傾向があります。以下の統計によると、若年層では平均年収が低めですが、40代~50代にかけてピークを迎えるのが特徴です。
年齢 | 平均値年収 |
---|---|
~19歳 | 235.56万円 |
20~24歳 | 313.25万円 |
25~29歳 | 390.72万円 |
30~34歳 | 426.46万円 |
35~39歳 | 466.49万円 |
40~44歳 | 493.89万円 |
45~49歳 | 533.3万円 |
50~54歳 | 554.96万円 |
55~59歳 | 554.29万円 |
60~64歳 | 509.25万円 |
65~69歳 | 427.14万円 |
70歳~ | 346.52万円 |
20歳未満では平均年収は約235万円と、業界の中でも最も低い水準です。20代前半では313万円程度に増え、30代前半になると426万円と着実に上昇します。40代~50代にかけて年収が高くなり、40~44歳で493万円、45~49歳で533万円、50~54歳で554万円と増加傾向にあります。60代以降は減少し、65歳以降では427万円、70歳以上では346万円と収入が下がる傾向です。
鍼灸師で年収1,000万円を達成することは、一般的な就業形態では難しいとされていますが、独立開業や特化したスキルの習得により可能性が広がります。収入を増やすには、経験やスキルにくわえ、開業や勤務形態の工夫も重要です。
2. 全日本鍼灸学会の調査では年収1,000万円超えるケースもある

全日本鍼灸学会が2019年に行った調査によると、一部の鍼灸師には年収1,000万円を超えるケースも見られます。特に30代と40代の年代で高収入が期待でき、中央値で500万円となっています。具体的には、30代の最高年収は1,200万円、40代でも最高1,000万円と、どちらも年収1,000万円以上に達する例が報告されています。
年代 | 中央値年収 | 四分位範囲* |
---|---|---|
20代 | 300万円 | 65~878万円 |
30代 | 500万円 | 179~1,200万円 |
40代 | 500万円 | 200~1,000万円 |
50代 | 360万円 | 121~754万円 |
60代 | 222万円 | 100~500万円 |
70代 | 155万円 | 73~350万円 |
80代 | 91万円 | 49~192万円 |
90代 | 80万円 | 65~125万円 |
出典:J-STAGE「はり・きゅう業の経営実態に関する全国調査」
*四分位範囲……データの中央50%部分の範囲のこと
調査結果から、20代の中央値年収は300万円(範囲:65~878万円)ですが、30代では中央値が500万円(範囲:179~1,200万円)まで上がります。40代も同様に中央値500万円(範囲:200~1,000万円)で、特に働き盛りの年代において高収入が得られる可能性が高いことが分かります。
年収の四分位範囲に幅があるため、鍼灸師の収入は年齢や地域、勤務形態、スキルにより大きく変動します。経験と技術を積み重ね、適切な経営を行うことで、1,000万円超の年収も視野に入れられる職業です。
3. 鍼灸師として給料アップを目指す方法

鍼灸師が収入を増やすためには、スキルや資格の拡充、勤務形態の選択が効果的です。関連資格の取得により仕事の幅を広げたり、顧客ニーズに応じた専門分野に特化することで信頼を得て収入増が期待できます。さらに、独立開業や条件の良い職場への転職も収入アップに大きく貢献する手段です。それぞれの方法について解説します。
3-1. 鍼灸師以外の資格を取得する
鍼灸師が年収を増やすには、関連資格の取得が有効です。鍼灸師のみで働く場合と、ほかの資格を併用する場合の年収は以下のように異なり、特に国家資格の柔道整復師(柔整師)との併用で大幅な収入増加が期待できます。
所持資格 | 中央値年収 | 四分位範囲 |
---|---|---|
鍼灸師のみ | 260万円 | 90~600万円 |
鍼灸師+あん摩マッサージ指圧師 | 240万円 | 90~500万円 |
鍼灸師+柔道整復師 | 720万円 | 315~1,350万円 |
鍼灸師+あん摩マッサージ指圧師+柔道整復師 | 690万円 | 300~1,320万円 |
出典:J-STAGE「はり・きゅう業の経営実態に関する全国調査」
「鍼灸師+柔道整復師」の組み合わせでは年収の中央値が720万円に達し、柔道整復を含む幅広い施術を提供できるため、高い収入を得やすくなります。また、鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の3資格を持つ場合も、年収中央値は690万円で、四分位範囲は300~1,320万円と収入の安定度が高まります。
このように、資格を組み合わせることで収入増加が見込めるため、さらなるスキル習得や資格取得は長期的な収入アップに大いに貢献するでしょう。
3-2. ニーズとマッチした鍼灸師になる
鍼灸師が収入を上げるには、顧客ニーズに対応した鍼灸技術やサービスの提供が重要です。美容鍼やスポーツ鍼灸、高齢者向け鍼灸、リハビリ向けの鍼灸施術は、特に需要が高い分野とされています。美容鍼灸は、エイジングケアやフェイスラインの引き締めを目的とする方に注目されており、中でも女性顧客に人気です。
また、スポーツ鍼灸やリハビリ施術はプロスポーツ選手や高齢者に対して効果的とされ、スポーツ施設や介護・福祉施設との提携が期待されます。ニーズに合わせた技術を習得し、専門家としてSNSやブログで積極的に発信することで、リピーターや新規顧客が増え、収入増加にもつながるでしょう。
3-3. 独立開業を目指す
独立開業は、鍼灸師が収入を増やす手段の1つです。経営者になれば価格設定やサービス内容、勤務地などを自由に決定できるため、高収入を目指せる可能性があります。開業には300~500万円の初期投資が必要ですが、立地や設備を工夫してコストを抑えることも可能です。
安定した鍼灸院経営には技術力にくわえ、集客のためのマーケティング力も求められます。柔道整復師などの資格を併用し、多様な施術を提供することで、幅広い顧客層の獲得が見込め、安定した収益につなげられます。
3-4. 条件の良い鍼灸院に転職する
鍼灸師が収入を上げるための1つの手段は、待遇の良い職場への転職です。営業形態によって収入に大きな違いがあり、個人経営よりも法人経営の鍼灸院のほうが安定した高収入を得やすい傾向があります。固定給を得られることも、安定性を高める理由の1つです。
営業形態 | 中央値年収 | 四分位範囲 |
---|---|---|
個人 | 320万円 | 120~720万円 |
法人 | 600万円 | 150~1,500万円 |
出張 | 150万円 | 50~450万円 |
出典:J-STAGE「はり・きゅう業の経営実態に関する全国調査」
法人鍼灸院では、年収中央値が600万円(範囲150~1,500万円)で高めの傾向にあります。一方、出張型は年収中央値が150万円で、収入が不安定になる場合もあります。
また、福利厚生や安定収入が期待できる法人鍼灸院への転職は、長期的なキャリアにも有利です。資格やスキル、知識を積極的に生かせる環境を選ぶことで、収入アップと働きやすさを両立できるでしょう。中には、開業支援を受けられる法人鍼灸院もあります。
まとめ
鍼灸師が年収を増やすには、資格の取得やスキルアップ、働く場の選択が重要です。特に、柔道整復師などの関連資格を取得することで施術の幅が広がり、法人鍼灸院など待遇の良い職場での収入増加が見込めます。ほかにも、美容鍼灸師やスポーツ鍼灸師など、ニーズとマッチした鍼灸師を目指すのも1つの方法です。
また、独立開業を目指す場合も、経営やマーケティングスキルを磨けば、1,000万円以上の年収も可能です。需要のある専門分野に特化するなど、戦略的にキャリアを積むことで安定した収入と充実感のある働き方を実現できるでしょう。
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