鍼灸師はフリーランスで働ける?必要な手続きや仕事探しの方法を解説
特定の企業や団体に所属せず、法人として独立しておらず、店舗を持たずに個人事業種として働く方をフリーランスと呼びます。鍼灸師は独立開業権を持っており、フリーランスとして仕事ができる医療系国家資格です。
フリーランスの鍼灸師はお客様のもとに出向き、居住環境や生活状況を把握した施術を行う「訪問鍼灸(出張鍼灸)」の業態を取ることが多いです。そのため、働き方が柔軟なだけでなく、一人ひとりのお客様に合わせた施術を行える魅力があります。
この記事ではフリーランスの鍼灸師の働き方や、訪問鍼灸を始める手続き・メリット、新規顧客を獲得する方法について解説します。
1.鍼灸師はフリーランスでも働ける?
フリーランスとは、特定の企業や団体に所属しておらず、店舗を持たずに個人事業主として働く方を指します。鍼灸師は独立開業権を持っているため、フリーランスとして働くことが可能です。
2021年の厚生労働省の調査では、鍼灸師の就業形態のうち、自営・フリーランス率は82.5%であると判明しています。鍼灸師がフリーランスとして働くことは一般的と言えます。
出典:職業情報提供サイト job tag「はり師・きゅう師」
フリーランスの鍼灸師が働く方法として一般的なのが「訪問鍼灸(出張鍼灸)」です。訪問鍼灸とは、鍼灸師がお客様の自宅やオフィスに出向いて施術をする働き方です。店舗を持たずに働けるため、開業資金や固定費を抑えられます。
また、お客様の居住環境や生活状況を理解でき、より個別のニーズに応じたケアを提供できます。
1-1.フリーランスの訪問鍼灸師として働くメリット
フリーランスの訪問鍼灸師として働くメリットには、以下のようなものがあります。
店舗を持って開業するより資金がかからない |
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フリーランスの訪問鍼灸師として働く最大のメリットとして、少ない資金で開業できることが挙げられます。訪問鍼灸師はお客様の自宅やオフィスに出向いて施術するため、店舗を構える必要がなく、開業に伴う初期費用や毎月の経費を大幅に抑えられます。 |
自己裁量で働ける |
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フリーランスの訪問鍼灸師は、自分で予定を組み、自己裁量で働けます。勤務日が自由であるため、固定の勤務時間に縛られず、自分のライフスタイルや家庭の都合に合わせて働くことが可能です。また、スキマ時間を利用して、スキルの向上や新たな資格取得の勉強に励めます。 |
人気があれば収入を増やせる |
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フリーランスの訪問鍼灸師は、自らのスキルや経験に応じた価格設定が可能であり、実力があれば高い収益を上げることが期待できます。また、お客様に対して良質なサービスを提供すれば、リピーターや、口コミによる新規顧客獲得も見込めます。 |
1-2.フリーランスの訪問鍼灸師として働くために必要な手続き
訪問鍼灸師として開業するためには、施術所開設届ではなく「出張業務開始届」を提出する必要があります。すでに施術所を開設した上で出張業務をする場合は、届出は必要ありません。出張業務開始届には、以下の内容を記入します。
- 業務開始年月日
- 業務の種類
- 免許証の交付者名、免許証番号及び登録年月日
- 施術者の自宅住所
- 氏名
- 電話番号
出典:渋谷区「施術所(あん摩マッサージ指圧・はり・きゆう)開設・出張施術業開始届」
注意すべき点として、出張業務開始届は「施術者の自宅住所」を所管する保健所に提出する必要があります。「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)」で以下のように定められているため、自宅住所と勤務地が異なる場合は注意しましょう。
第九条の三 専ら出張のみによつてその業務に従事する施術者は、その業務を開始したときは、その旨を住所地の都道府県知事に届け出なければならない。その業務を休止し、若しくは廃止したとき又は休止した業務を再開したときも、同様とする。
引用:e-gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」/引用日2023/4/26
また、出張業務の範囲は施術者の自宅住所から片道16km以内とされています。片道16km超えるエリアへの訪問は、絶対的な理由がある場合に限られます。どのような場所でも出張できるわけではないという点にも注意しましょう。
出典:厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について」
なお、絶対的な理由の例として、厚生労働省は以下のように回答しています。
「絶対的な理由」の例としては、患家の所在地から片道16km以内に保険医療機関や施術所が存在せず、当該患家の所在地に最も近い施術所からの往療を受けざるを得ない事情が存在するなどがあげられる。(留意事項通知別添1第6章の5)
引用:厚生労働省「はり、きゅう及びあん摩・マッサージの施術に係る療養費の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」/引用日2023/5/11
2.訪問鍼灸以外のフリーランス鍼灸師の主な仕事
鍼灸師の需要がある職場は、鍼灸院だけでなくサロンやスポーツ施設など幅広く存在します。フリーランス鍼灸師も同じく、訪問鍼灸以外のさまざまな働き方が存在します。訪問鍼灸以外のフリーランス鍼灸師の仕事についてご紹介します。
2-1.パーソナルトレーナー
パーソナルトレーナーとして活躍する鍼灸師は、スポーツ選手やフィットネスジムの利用者などを対象に、身体の状態や目的に合わせた運動指導や鍼灸施術を行います。仕事内容は、運動プログラムの作成、筋肉疲労や怪我の回復促進、コンディション維持のサポートなどです。
パーソナルトレーナーとしての鍼灸師は、スポーツ施設やトレーニングジム、リハビリテーション施設などで業務委託契約を結んで働くのが一般的です。ただし、個人でお客様を持ち、レンタルジムやお客様の自宅などで施術を行うことも可能です。
フリーランス鍼灸師としてパーソナルトレーナーを目指す場合、就職時に「はり師」と「きゅう師」以外で特別な資格は必要ありません。ただし、お客様にマッサージを行うときにはあん摩マッサージ指圧師資格が、怪我の整復を行うときには柔道整復師資格が必要です。これらの資格を取得することで、よりお客様に合ったサービスを提供できるでしょう。
医業類似行為のうち、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第十二条及び柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第十五条により、それぞれあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師の免許を有する者でなければこれを行ってはならないものであるので、無免許で業としてこれらの行為を行ったものは、それぞれあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第十三条の五及び柔道整復師法第二十六条により処罰の対象になるものであること。
引用:厚生労働省「医業類似行為に対する取扱いについて」/引用日2023/5/11
また、スポーツ関連の資格を取得しておくことでさらに需要を高められます。例えば、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーなどの資格も持っていると、就職時にアピールができます。
2-2.鍼灸専門学校の講師
鍼灸専門学校の講師も、フリーランス鍼灸師の働き方の1つです。鍼灸専門学校では、鍼灸師を育てるための専門知識やノウハウを教える役割が求められます。フリーランス鍼灸師が先生として活躍することで、自身のスキルや経歴を生かし、次世代の鍼灸師の教育に貢献できます。
鍼灸専門学校の講師は、基本的な鍼灸の知識や実践的な臨床技術を伝授する役割を担います。鍼灸師としての実際の経験談をもとに実践的な技術指導ができるのは、フリーランス鍼灸師ならではの強みです。
ただし、フリーランス鍼灸師が鍼灸専門学校の教員になるためには、鍼灸の教員養成課程を開講している専門学校か大学に2年以上通う必要があります。鍼灸師であれば誰でも教員になれるわけではないので注意しましょう。
3.フリーランスの鍼灸師が仕事を探す方法
フリーランスの鍼灸師は、自由な働き方ができる一方、自分自身で営業・集客をする必要があります。フリーランスとして自身の新たな顧客を増やすために役立つ、仕事探しの方法をいくつか紹介します。
3-1.以前の職場からの紹介
過去に働いていた職場での実績や業界関係のつながりから、新たな仕事を獲得できる可能性があります。以前の職場や同僚に、自分がフリーランス鍼灸師として独立したことを伝えましょう。その際、自分の得意分野や施術の価格帯、ターゲットとしている年齢層などを詳細に伝えると、紹介が得られる可能性が高まります。
また、以前の職場と業務委託契約を結ぶのも1つの方法です。業務委託とは、特定の業務を一定期間請け負う契約で、フリーランスの働き方に適した形態です。以前の職場と業務委託契約を締結することで、安定した給与を確保しながら、新たな顧客へもサービスを展開できる余地が生まれます。
3-2.知人の紹介
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会の調査によると、フリーランスの仕事獲得経路の第1位は「人脈(知人の紹介含む)」となっています。
出典:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会「フリーランス白書2022」
友人や家族、地域の仲間や先輩など、日常生活で築いた人間関係から新たな仕事の機会に出会うことは多いです。知人からの紹介は信頼性が高く、また口コミで評判が広がれば、さらなる仕事が舞い込む可能性もあります。
3-3.SNSやWebサイトを利用したプロモーション
SNSやWebサービスを利用したプロモーションも、フリーランスの鍼灸師が仕事を探す上で効果的な方法です。インターネットを利用することで、手軽に自分のサービスを多くの人に普及できるため、幅広い層からの仕事依頼が期待できます。
まず、自分専用のホームページを作成しましょう。プロフィールや提供サービス、実績やお客様の声など、鍼灸師としてのアピールポイントを掲載して、訪問者に信頼感を与えるのが大切です。
次に、SNSを活用しましょう。InstagramやFacebook、Twitterなど、自分に合ったプラットフォームでアカウントを作成し定期的に投稿しましょう。施術の様子やお客様の声、キャンペーン情報などのターゲット層が興味を持ちやすいコンテンツを、ハッシュタグを利用して届けましょう。
ただし、鍼灸師はあはき法によって広告可能な内容が制限されています。Webサイトに掲載される広告について、規制は2023年5月現在ありませんが、Web上の広告に対する規制が検討されているため注意が必要です。
まとめ
鍼灸師がフリーランスとして働くことは一般的であり、82.5%の鍼灸師が自営・フリーランスとして働いています。フリーランスの鍼灸師が主に取る業態は、「訪問鍼灸(出張鍼灸)」です。また、ほかの仕事として、パーソナルトレーナーや鍼灸学校の講師として働く方も存在します。
フリーランスの訪問鍼灸師には、店舗を持って開業するより資金がかからず、自分の能力に応じた収入を得られ、自己裁量で働けるメリットがあります。ただし、自由な働き方ができる一方、自分で集客をする必要もあるため、以前の職場や知人に顧客を紹介してもらったり、プロモーションを行ったりすることが必要です。
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