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主婦が鍼灸師になるには?家事や育児の合間に資格は取れる?

主婦が鍼灸師になるには?家事や育児の合間に資格は取れる?

鍼灸師とは、鍼(はり)と灸(きゅう)を用いた施術を行う専門職のこと。「はり師」と「きゅう師」の両方の国家資格を取得した方のみが、鍼灸師として働けます。鍼灸師は街中の鍼灸院・鍼灸接骨院だけでなく、医療福祉業界やフィットネス業界など幅広く活躍できることから、手に職をつけたいと考えている主婦層からも人気の職業となっています。

そこで今回は、主婦が鍼灸師を目指す方法から国家資格の最短取得期間、鍼灸師の概要、鍼灸師を目指すために受ける国家試験の概要と合格率まで詳しく説明します。鍼灸師の仕事に少しでも興味のある主婦の方は、ぜひ最後までご覧ください。

1. 主婦が鍼灸師になるには?最短期間は?

主婦が鍼灸師になるには、「はり師」と「きゅう師」の両方の国家資格を取得しなければなりません。そのためには、国が指定する養成学校の鍼灸科などではり・きゅうに関する専門知識を一定期間以上学び、はり師国家試験ときゅう師国家試験の受験資格を得る必要があります。鍼灸師養成施設へ入学するにあたって、年齢や資格は問われません。つまり、鍼灸師は主婦や社会人でも目指すことが可能です。

また、鍼灸師資格の取得期間は最短で3年です。この期間はいわゆる「学校卒業までの年数」を指し、入学する養成施設によって異なります。たとえば、大学の場合は4年間、専門学校の場合は3年間です。最短期間ではり師・きゅう師の国家試験にチャレンジしたい方は、鍼灸専門学校への入学を検討するとよいでしょう。

なお、主婦の場合は家事・育児と通学を両立する必要があることから、午後のみ、もしくは夜間部のカリキュラムがある学校に通う方が多い傾向にあります。また、はり師・きゅう師の受験資格は通信教育では得られません。

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2. 鍼灸師とは?

そもそも鍼灸師とは、人間の全身にあるツボや筋肉を鍼で刺入したり灸で温めたりして、体の不調の予防や健康回復を目指す医療技術職です。

本来、鍼を用いるはり師と灸を用いるきゅう師は別々の国家資格ですが、両方の国家試験を同時に受験する方が多いため、総称して鍼灸師と呼ばれています。したがって、鍼灸師という資格・免許は存在しないことに注意しましょう。

ここからは、鍼灸師の主な仕事内容と就職先について詳しく紹介します。

2-1. 鍼灸師の仕事内容

鍼灸師は、お客さんの体の不調をカウンセリングで聞き出した後、状態に応じて適切な判断と施術を行います。具体的な仕事内容としては、下記が挙げられます。

  • 鍼療法
    髪の毛程度の極めて細い鍼を用いて全身にあるツボや筋肉に刺激を与え、痛みの緩和や血行の促進を図る施術です。皮膚に鍼を刺入または接触させる方法や、鍼に微弱な電流を流す方法など、施術法は多岐にわたります。
  • 灸療法
    ヨモギを乾燥・精製させて作った「艾(もぐさ)」を用いて、全身のツボや冷えが見られる部位に温熱刺激を与え、血行の促進を図る施術です。主に、皮膚に艾を直接乗せて燃焼させる「直接灸」と、皮膚と艾の間ににんにくや生姜などを入れる「間接灸」の2種類があります。
  • 脈診
    東洋医学の代表的な診察法です。一般的な医療機関で行われる西洋医学において脈診は医師が患者さんの脈拍を調べるための方法ですが、東洋医学にあたる鍼灸での脈診は身体のエネルギー(気)の流れやバランスを診たり、鍼灸施術による変化を確認したりするために行われます。
  • 望診
    お客さんの皮膚の状態や舌の状態、血色、表情、動作を目で見て健康状態を判断する診察法です。現代医学においては「視診」とも呼ばれています。舌の状態を見る診察法は「舌診」と言い、重要な診察の一つとされています。

2-2. 鍼灸師の就職先

鍼灸師の活躍の場は、医療分野のみならずスポーツ分野や美容分野にも広がっています。下記は、鍼灸師の主な就職先です。

  • 鍼灸院・鍼灸接骨院
    鍼灸師の代表的な職場であり、体に何らかの不調を抱えたお客さんに対して適切な施術を提供します。鍼灸接骨院の場合は柔道整復師も在籍することから、骨折や脱臼・打撲といったケガによる痛みの緩和を目的に訪れるお客さんが多い傾向です。近年では、月経やPMS、不妊といった女性ならではの悩みにアプローチする婦人科系の接骨院も注目されており、それに比例するように女性鍼灸師の需要も高まっています。
  • 病院・クリニック
    整形外科や神経科、リハビリテーション科の鍼灸師として、病気やケガを抱える患者さんに、痛みの緩和につながる鍼灸施術を行います。医師や看護師などと連携を図りながら、医療チームの一員として働くことが特徴です。
  • 介護施設・リハビリテーション施設
    介護施設の鍼灸師または機能訓練指導員として、高齢者が抱える体の悩みに適切な施術を行います。鍼灸施術は体への負担が少なくリラックス効果も期待できることから、超高齢社会が続くと予測されている近年では介護施設における鍼灸師の需要がさらに高まっています。
  • スポーツ施設
    鍼灸は体の調子を整える作用が期待されており、近年ではスポーツ業界においても注目を集めています。具体的な就職先としては、スポーツ鍼灸に特化した鍼灸院やフィットネスジムなどが挙げられます。一定のスキル・経験を積んだ後は、プロスポーツチームの専属トレーナーとして働く鍼灸師もいます。
  • 美容鍼灸サロン・エステサロン
    顔のシワ・たるみや全身のむくみなどにアプローチする美容鍼灸の施術をメインとするサロンも、鍼灸師の就職先に挙げられます。女性客が多いこともあり、女性の美容鍼灸師は特に需要があります。

3. 主婦が鍼灸師になるのに受ける国家試験

主婦が鍼灸師になるには、はり師・きゅう師両方の国家資格を取得しなければなりません。国家資格取得に向けては、国が指定する養成機関で必須のカリキュラム科目を修め、受験資格を得た上で国家試験に合格する必要があります。

最後に、はり師・きゅう師それぞれの国家試験の概要と合格率を説明します。

3-1. はり師試験・きゅう師試験の概要

はり師国家試験ときゅう師国家試験は年に一度、毎年2月下旬に実施されます。試験形式はいずれも筆記試験で、試験科目は下記の通りとなっています。

  • 医療概論(医学史を除く)
  • 衛生学・公衆衛生学
  • 関係法規
  • 生理学
  • 解剖学
  • 病理学概論
  • 臨床医学総論
  • 臨床医学各論
  • リハビリテーション医学
  • 東洋医学概論
  • 経絡経穴概論
  • はり理論またはきゅう理論および東洋医学臨床論

出典:厚生労働省「はり師国家試験の施行」

出典:厚生労働省「きゅう師国家試験の施行」

はり師・きゅう師の国家試験を同時に受ける場合、「はり理論またはきゅう理論および東洋医学臨床論」以外の共通科目については、いずれかの試験が免除されます。

はり師・きゅう師国家試験の合格基準は「正答率60%以上」で、総得点170点中102点以上を達成すれば合格となります。なお、配点は1問1点です。

3-2. はり師試験・きゅう師試験の合格率

2024年2月に実施された「第32回はり師・きゅう師国家試験」の合格率は、下記の通りです。

受験者数 合格者数 合格率
はり師国家試験 4,176人 2,892人 69.3%
きゅう師国家試験 4,111人 2,887人 70.2%

出典:厚生労働省「第32回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」

はり師・きゅう師国家試験の合格率は70%前後となっており、合格難易度はそれほど難しくありません。しかし、第32回はり師国家試験の合格率は令和に入ってから最も低い結果となっています。

鍼灸師国家試験の合格率・難易度とは|試験内容や勉強方法も解説

はり師・きゅう師国家試験は年に一度しか開催されないため、一方でも不合格となれば翌年に再度チャレンジしなければなりません。確実な合格を目指すには、試験対策が欠かせないことを覚えておきましょう。

まとめ

鍼灸師は、はり師資格ときゅう師資格の2つの国家資格を持つ専門職のことです。主婦が鍼灸師になるには、国が指定する養成施設でカリキュラムを修めて国家試験に合格する必要があります。

近年、鍼灸師は幅広い業界で需要が高まっているほか、特に女性鍼灸師は多くの分野で重宝されるため、手に職をつけたいと考える主婦が育児・家事と両立しながら鍼灸師を目指すのはめずらしくありません。

国家試験合格率は70%前後と決して低くはないものの、年に一度しか開催されない国家試験で一発合格を目指すには試験勉強が欠かせません。ここまでの内容を参考に、ぜひ鍼灸師を目指してみてはいかがでしょうか。

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