東洋医学とはどんな医学?西洋医学との違いや施術方法について解説
病院で漢方を処方されたり、鍼灸整骨院に通ったりして、東洋医学に触れた経験があるという人も多いでしょう。東洋医学は中国や日本に昔から伝わる医学のことで、科学に基づいた治療を直接行う西洋医学とは異なった考え方に基づいて施術が行われるのが特徴です。
当記事では東洋医学がどのようなものなのか、西洋医学との違いや施術方法などを解説します。不調の根本的な原因にアプローチする東洋医学の考え方を知り、理解を深めましょう。
1.東洋医学とは?
東洋医学とは主に中国で発達してきた医学で、2000年以上前から、東アジアの人々の気候や風土、生活習慣に基づき利用されてきた施術法です。江戸時代に西洋医学として「蘭学」が普及し始めた際、既に日本にあった医学を「漢方」と呼ぶようになったとされています。
西洋医学が症状の出ている部分を見て、手術や薬で治療する医学であることに対して、東洋医学は症状だけでなく全身を見て病気の原因を特定し、有効な施術を判断する医学です。東洋医学は個人の体質を重視し、自然治癒力を大切にします。
病気になる前の身体の不調を根本から治して病気を予防する目的で東洋医学を頼る人も少なくありません。
1-1.東洋医学の施術方法
東洋医学の考え方として、病気を未然に防ぎ健全な体質に整える「未病治」というものがあります。東洋医学における健康な状態とは、「気血水」のバランスが整っていて、「五臓」がよく働いている状態です。それぞれ詳しく解説します。
●気血水
「気」は身体や心のエネルギーを指し、「血」は血液や栄養、「水」はリンパ液や汗など血液以外の水分のことを指します。気血水がバランスよく体内を巡っているか、偏っていないかを診ます。
この中でも生命のエネルギーを意味するのが「気」です。「病は気から」という言葉があるように、東洋医学では心身の調和を大切にします。どれか1つでも強すぎたり弱すぎたりすると体の不調につながることもあり、どの要素が弱いかは体質によって異なるためカウンセリングが必要です。
●五臓六腑
東洋医学では、すべての病気は五臓六腑のバランスの乱れが引き起こすと考えられています。五臓は肝・心・脾・肺・腎を、六腑とは主に消化器官のことを指し、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の6つの腑です。
また、五臓の働きは気血水のバランスに影響を与えており、臓腑が細胞を通じてつながっていると考えられるため、東洋医学の施術は全身を診て判断します。五臓には一部西洋医学と同じ漢字が使われていますが、必ずしも同じ意味ではありません。
【五臓】
肝 |
|
---|---|
心 |
|
脾 |
|
肺 |
|
腎 |
|
1-2.西洋医学との違い
西洋医学と東洋医学では、考え方や治療法が根本から違います。西洋医学は、症状を科学的・理論的に分析し、投薬や外科手術によって排除する「外からの治療」です。対して東洋医学は、不調の原因を全身から探り身体のバランスを整えることによる「内からの改善」です。
たとえば肌に不調が起こった際、西洋医学の場合は皮膚科で治療・投薬などを行いますが、東洋医学では漢方薬や食事療法で改善しようする傾向があります。
どちらかが優れているというわけではなく、症状にあわせて適切な方法を取り入れることが大切です。交通事故での大けがや急激に進行する悪性腫瘍のような緊急性が高い症状は、西洋医学のほうが局所的に対処でき、命を救える可能性が高いでしょう。反対に、原因がはっきりとしない体調不良であれば、東洋医学でじっくりと根本改善していくのもよいでしょう。
2.東洋医学の種類
現在日本で用いられているのは、漢方薬局やクリニックでの「漢方医学」、鍼灸院や鍼灸科での「鍼灸療法」、整骨院や接骨院・指圧マッサージ院での「手技療法」の3つです。各施術を扱うにはそれぞれ国家資格が必要となり、健康保険が適用されるかどうかはケースバイケースです。
具体的な施術方法には、以下のような特徴があります。
2-1.漢方医学
漢方薬とは、植物や動物、鉱物などの自然物から抽出した生薬を組み合わせたものです。漢方医学では、漢方薬をお客様の体質や特徴にあわせて処方します。
解熱剤や痛み止めのように、西洋薬が1つの疾患に対して強い効き目があるのに対して、漢方薬はそれぞれの生薬の効果が重なり複数の症状に有効である場合もあります。虚弱体質や胃腸の弱さからくる不調、精神的な不安やイライラ、PMSや月経痛など婦人科系の不調や冷え症などの改善を得意とします。
現在は多くの医師が漢方薬を処方していますが、すべての医師が漢方専門というわけではありません。より専門的な知識を持った漢方認定医と漢方専門医資格の取得法を下記で紹介します。
●漢方認定医
日本での医師免許取得、医籍登録後3年で認定医試験を受け合格する
●漢方専門医
日本での医師免許取得、専攻医登録をし、医籍登録後6年で専門医試験を受け合格する
どちらも西洋医学の知識を取得した上で漢方医学を学ぶため、西洋医学と東洋医学双方の観点からみて症状を判断することができます。
2-2.手技療法
手技療法には、あん摩・マッサージ・指圧・柔道整復が含まれます。それぞれ同じような意味として用いられることもありますが、起源や理論は異なります。
●あん摩
不調のある部分を押す、もむ、さする、なでる、叩くなどし、肩こりや腰痛などを緩和する手技です。中国から伝わった手技で、主に心臓から遠ざかるようにして施術します。
●マッサージ
西洋から日本に伝わったのは明治以降で、医療マッサージとして取り入れられました。あん摩とは反対に、心臓に向かって施術することで血液やリンパ液の流れ改善につながり、新陳代謝を高める働きがあります。
●指圧
あん摩術の圧迫法が日本で独自に発展したものと言われています。親指や手のひらで、押す速度や強さを変えて刺激を与え、恒常性を刺激することで生体の健康をはかります。
●柔道整復
日本で生まれ、柔道の「殺法」「活法」を取り入れた伝統手技です。骨折や脱臼などで損傷した運動機能の早期回復を促し、リハビリも行います。
2-3.鍼灸療法
症状に適したツボに細い針を刺すものが鍼、もぐさを置いて燃やすのが灸で、どちらも生体に刺激を与えて自然治癒力を高める施術です。鎮痛や血行改善、免疫力向上のほか、近年は肌の自己再生力を高めることから美容目的でも注目されています。鍼灸師は3年以上の鍼灸専門学校または鍼灸大学などに通う必要がある国家資格です。
●鍼施術
直径0.12mm~0.18mmというごく細いステンレス製の針をツボに刺します。使い捨てタイプを使用することで感染を防止しており、日本独自に編み出された「管鍼法」と呼ばれる痛みが少ないやり方が一般的のため、安心して受けられる施術です。鍼を挿入したまま振動させる「振せん術」や、10~15分程度刺したまま留める「置鍼術」、鍼を電極にし微弱な電流を流す術などがあります。
●灸施術
もぐさという、ヨモギの葉を乾燥させたものを燃やし、ツボに熱刺激を与える施術です。皮膚の上に直接もぐさを置く「直接灸」のほか、生薬を挟み燃やす「間接灸」があります。間接級ではニンニクやショウガなどの薬効成分が高いものを使用することで、生薬の効果を与えながらも痛みや熱さを軽減できます。
まとめ
東洋医学とは中国から伝わり発達した医学のことで、不調の根本的な原因を突き止め改善を目指す点が西洋医学とは異なるポイントです。不調がある部分だけでなく、全身のバランスが崩れていないか確認した上で施術の内容を決めます。
東洋医学には大きく分けて漢方医学・手技療法・鍼灸療法の3種類があり、施術を行うためには専門知識が必要です。東洋医学について深く学びたい場合は、専門の学校や養成機関に通うことをおすすめします。
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